研究概要 |
大腸神経内分泌癌は、高頻度に遠隔転移をきたす極めて予後不良の疾患であり、新規治療法の開発が待ち望まれている。これまでに申請者らは、lumicanが大腸癌、膵癌、肺癌、子宮頸癌、皮膚腫瘍等の様々な腫瘍細胞やその間質に発現し、癌の進展に関与する重要なタンパク質であることを明らかにした。さらに、大腸神経内分泌腫瘍においてもlumicanが発現し、その発現が分化度や増殖に関与することを報告した。 近年の研究で癌細胞の中には、癌幹細胞と呼ばれる特殊な細胞が存在することが明らかになってきた。癌幹細胞は、癌の遠隔転移や治療後再発に中心的な役割を担うと考えられており、癌幹細胞の特性を解明し、それを根絶する治療法の開発に注目が集まっている。Lumicanは間葉系幹細胞と、血管内皮細胞の前駆細胞の遊走や浸潤の制御に重要な細胞外基質であることが報告されている(Malinowski M et al., PLoS One. 2012)。癌組織においても、癌幹細胞のニッチを形成する細胞外基質であることが知られているが、大腸神経内分泌腫瘍における癌幹細胞とlumicanの関連については明らかとなっていない。 そこで申請者は大腸神経内分泌腫瘍における癌幹細胞について検討を開始した。平成24年度は、大腸の神経内分泌癌、神経内分泌分化を伴う腺癌、カルチノイドの各病理組織切片を用い、腫瘍細胞における癌幹細胞マーカーのCD24, CD44, CD133, ESA, Src, CXCR4の発現を酵素抗体法にて検討した。その結果、腫瘍細胞は様々な程度に癌幹細胞マーカーを発現していた。腺癌、カルチノイドと比べ、神経内分泌癌においてはCD24の発現が高い傾向が見られた。今後、症例の追加を行い、結果の確認を行うとともに、培養細胞を用いた神経内分泌腫瘍における癌幹細胞の役割やlumicanとの関連について解明する。
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