消化管神経内分泌癌は高悪性度で予後不良の疾患である.近年,がん幹細胞(CSC)はニッチ依存的に幹細胞性を維持し,腫瘍の増殖・転移のみならず,薬剤・放射線耐性能にも関与すると報告された.一方で,細胞外基質の構成因子であるlumicanはsmall leucine rich proteoglycan family(SLRP)に属し,腫瘍の増殖・遊走・接着に働き分化に関与する.本研究では神経内分泌癌におけるlumicanの発現と役割について検討した. 平成24年度は,大腸の神経内分泌癌,神経内分泌分化を伴う腺癌,カルチノイドの病理組織切片を用い,腫瘍細胞におけるCSCマーカーの発現を検討し,神経内分泌癌においてCD24の発現が高い傾向を確認した.LumicanはNECの細胞質,および腫瘍間質に発現を認めた. 平成25年度は,上行結腸神経内分泌癌由来の培養細胞株NENMS-1を用いた検討を開始した.CSCの性質を確認する方法の一つであるスフェア形成法を行ったところ,NENMS-1のスフェアではSrc,CD133といった幹細胞マーカーとともに,lumicanの発現が高値を示した.また,NENMS-1にlumican発現ベクターを遺伝し導入し,lumican過剰発現細胞を作成したところ,lumican過剰発現NENMS-1では細胞増殖の抑制,スフェア形成能の抑制,細胞遊走の抑制が見られた. 平成26年度は,NENMS-1を用いAldefluor assayで陽性分画と陰性分画をreal time PCRにて比較したところ,陽性分画ではCD133とlumicanの発現が高値を示した. 以上より,lumicanは,消化管NECのCSCマーカーとなる可能性が示唆された.
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