研究課題
平成24年度は久留米大学の臨床試験のワクチン候補として用いられている31種類のペプチドに対する抗体(抗ペプチド抗体)のサブセット解析を実施した。結果として、すい臓がん患者、健常人、感染症(インフルエンザ・C型肝炎)、自己免疫疾患(リウマチ)、免疫疾患IgA腎症、その他のがん患者(血液腫瘍、肝臓がん患者)において、抗ペプチド抗体は検出されることが示唆された。健常人のサブセット解析では、加齢とともに抗ペプチド抗体(IgM)は減少傾向にあり、IgGも同様の傾向が見られたが65歳以上では上昇傾向にあることが示唆された。がん患者と健常人の比較では、IgMが血液腫瘍、肝臓がんともに健常人と比較して有意に高いことが示唆された。IgGは健常人と比較して、肝臓がんで有意に高いものの血液腫瘍では有意に低くなっていることも判明した。これには抗原に対するクラススイッチが要因の一つとして考えられる。特に、がん患者(血液腫瘍、肝臓がん)においては、ペプチドワクチン投与の有無に関わらず、抗ペプチド抗体値が高い患者においては生命予後が有意に延長するという新しい知見が得られた。このことより、抗ペプチド抗体の測定は予後予測のバイオマーカーとして有用である可能性が示唆された。また、ヒトとマウスでアミノ酸配列が一致するペプチドに対する単クローン抗体産生細胞株(ハイブリドーマ)を作製した。その後、ヒトのHLA-A24と相同性の高いBalb/cマウスを用いて抗ペプチド抗体の細胞傷害活性への関与を検討した。
2: おおむね順調に進展している
ヒト血漿における抗ペプチド抗体サブセットの解析は、全ての解析を終え、結果を論文としてまとめたものを投稿した。Developmental and Comparative Immunologyに受理され、現在 in pressとなっている。この点において、当該研究はおおむね順調に進展していると言える。
今後は、がん患者血漿を用いて、液性因子(サイトカイン等)や抗酸化ストレスの測定を実施し、抗ペプチド抗体との相関を検証する予定である。またマウスモデルを用いた、抗ペプチド抗体(単クローン抗体)の細胞傷害の活性化に関する解析を引き続き実施する予定である。
実験動物(マウス)の購入、免疫機能測定試薬の購入、細胞培養液、プラスチック実験容器、論文投稿料として支出予定である。
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Dev Comp Immunol
巻: in press ページ: in press
pii: S0145-305X(13)00093-1. 10.1016/j.dci.2013.04.004