研究実績の概要 |
対象:2013年から2015年に待機的に心臓手術(大動脈弁手術、胸部大血管手術)を施行した患者38例。 方法:術前に空腹時血糖・血中遊離脂肪酸値、およびブドウ糖負荷試験を施行し負荷2時間後の血糖値を測定。さらにインスリン抵抗性の指標であるHOMA-R(homeostasis model assessment)を算出。術前経胸壁心エコーにて心筋興奮―収縮連関を測定。術後1週間24時間心電図モニターし心房細動の発生の有無を監視。手術時に採取した右心房筋をもちいて最終年度にRT-PCR法により心筋の糖及び脂肪酸代謝に関連する遺伝子の発現を検討。 結果:38例中18例(47%)に術後心房細動を認めた。心房細動群では非心房細動群に比べて術前空腹時血糖が高い傾向。一方、血中遊離脂肪酸値および負荷2時間後の血糖値に差はなし。HOMA-Rは両群間で差はなかったが、糖尿病患者5例中4例に術後心房細動を認めた。術前心筋興奮―収縮連関に両群間に差はなし。心筋細胞内脂肪酸輸送蛋白FABP3の遺伝子発現がPOAF群で有意に低かった(1.46±0.45 vs. 1.92±0.57 arbitrary unit, P=0.013)。 耐糖能異常を示す12症例(術後心房細動5例;非心房細動7例)の検討では、脂肪酸の細胞膜内への移送に関与するCD36が術後心房細動群において高い傾向にあった(1.62±0.80 vs. 0.93±0.41 arbitrary unit, P=0.08)。 結語:インスリン抵抗性に加えて心筋細胞の脂肪酸輸送蛋白の異常と、心臓大血管術後の発作性心房細動の発生との関連が示唆された。
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