研究概要 |
1) 肺腺癌組織を用いたアロマターゼ、性ホルモン受容体( ERs,PR)、HER2、Ki-67に対する免疫染色 現在免疫染色の解析が終了している検体は157例で、アロマターゼ,ERα,ERβ,PR,HER2の陽性率はそれぞれ88.5%,1.9%,80.1%,2.6%,4.5%であり、72.4%がアロマターゼとERβ共に陽性であった。これらの結果と臨床病理学的因子の間には相関は認められなかった。次にKi-67の免疫染色を行った。Ki-67の抗体の一つであるMIB-1の陽性率(MIB-1 index)は癌細胞の増殖能を反映しており、核分裂像に代わる客観的指標として広く用いられてきている。結果としてMIB-1 indexの平均値は18.0%で、アロマターゼの発現の有無による有意差は認められなかった。しかし、肺腺癌の多くの症例でアロマターゼが発現していることは明らかであり、今後の研究により腫瘍内のアロマターゼを介して作られたエストロゲンが癌の発育・進展に関与していることが明らかとなれば、アロマターゼ阻害剤(AI)が肺腺癌に対しても臨床応用できる可能性が期待できる。 2) 肺腺癌におけるEGFR,KRAS,BRAF変異解析と、アロマターゼ、性ホルモン受容体(ERs,PR)、HER2の蛋白発現との相関の検討 EGFR,KRAS,BRAF変異解析は、現在のところ351例終了しており、変異率はそれぞれ45.0%,14.1%,1.0%であった。この中で、アロマターゼの免疫染色を行った157例については相関は認められなかった。これらの遺伝子変異の有無で、イレッサに代表されるEGFR-TKIの効果に差が出るとされており薬剤選択の指標となっているが、アロマターゼの発現と相関がなかったことから、AIが肺腺癌に対して臨床応用されるようになれば、変異の有無に関係なく幅広い症例に使用できる可能性が示唆された。
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