研究課題/領域番号 |
24791455
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
佐野 厚 東京大学, 医学部附属病院, その他 (20569834)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 腫瘍外科学 / 肺癌 / マイクロRNA / エピジェネティクス / DNAメチル化 |
研究概要 |
原発性肺癌におけるエピジェネティックなマイクロRNA発現状況を明らかにするために,マイクロRNA687個を,ゲノム上に再マップし,ゲノム構造より1)CpGアイランド上にあるマイクロRNA,2)CpGアイランドの下流1kBPにあるマイクロRNA,3)CpGアイランドが第一exonにあり,その遺伝子のイントロンに存在するマイクロRNAに分類した.DNAメチル化により,発現が抑制されているマイクロRNAを明らかにするために,脱メチル化剤である5‘-aza-dCで処理前後の肺癌細胞株6株での発現状態の変化および,肺癌切除サンプルでのマイクロRNAの発現の検討から,マイクロRNA34bがDNAメチル化により肺癌で発現抑制を受け発現低下とリンパ管侵襲に相関することを明らかにした. またこれらの解析を通じて,マイクロRNA139が肺癌で発現低下をしていることを見いだした.マイクロRNA139はマイクロRNA139をイントロンに含むPDE2Aと発現の相関が認められたため(マイクロRNAはPDE2Aの転写の際にそのイントロンから切り出されて合成されると考えられる),PDE2Aのプロモータ領域の解析を行った.PDE2A遺伝子は5’が異なる2つのアイソフォームがあり,気道上皮および正常肺,肺癌のいずれでも短いアイソフォームのみ発現しており,短いアイソフォームの転写開始点はCpGアイランドになっていた.PDE2AのCpGアイランドではDNAメチル化は認められず,発現促進の標識である,ヒストン3リジン4のメチル化を認めたため,DNAメチル化を介さないエピジェネティックな抑制を受けているものであることが明らかになった. 肺癌切除サンプルにおけるマイクロRNA139の発現量と,臨床病理学的解析を行ったところ,発現低下群で統計的有意差を持ってリンパ節転移および脈管侵襲が認められた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
文献情報のみでなく,公開されているゲノム情報などのバイオインフォマティクスリソースを用いて,新たに肺癌の臨床病理的マーカーとなるマイクロRNAを明らかにすることができた.その分子生物学的機序についてはまだ明らかにできていないが,予備敵解析において,マイクロRNA139の標的となり得る(マイクロRNA139による発現抑制を受ける)遺伝子の発現との間に負の相関を認めており,次年度引き続き解析を続けることで,その全貌を明らかにすることが期待できる.
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今後の研究の推進方策 |
今後,さらにマイクロRNA139の発現を規定する,PDE2Aのプロモータのクロマチン状況を明らかにするために,ヒストン3リジン9,およびリジン27のメチル化の状態(いずれもメチル化は発現抑制のマーカーである)の検討をクロマチン免疫沈降により加えるとともに,マイクロRNA139の標的遺伝子を明らかにすることで,マイクロRNA139の肺癌の形質すなわち,病理学的特徴や,抗癌剤感受性などへの影響を明らかにしていく予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
これまで同様に,肺癌細胞株の培養のための試薬/消耗品,肺癌切除サンプルの分子生物学的解析のための分子生物学的解析のための試薬/消耗品に充当していく予定である.とりわけ,マイクロRNA139の発現を規定する,PDE2Aのプロモータのクロマチン状況を明らかにするために,ヒストン3リジン9,およびリジン27のクロマチン免疫沈降のためにジメチル化ヒストン3リジン9,トリメチル化ヒストン3リジン27に対する抗体については,複数のメーカーのものについて検討を行うために十分な金額を充当する予定である.
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