研究概要 |
ラット肺内気管移植モデルを用いて、拒絶に伴う肺内リンパ組織新生を証明し、リンパ組織新生を生じた肺組織の培養上清から、ドナー特異抗体の産生を証明した。 まずBrown-Norway ratの気管をLewis ratの左肺内に移植し、術後14日、28日、84日でそれぞれ肺内に、T-cell zone, B-cell zoneを伴うリンパ組織新生が生じることを組織学的に示した。Lewis ratの気管をLewis ratに移植した場合は、リンパ組織はわずかに生ずるが日を追って消退した。上記の各タイムポイントで、レシピエントラットの血清、脾臓、肺組織を採取し、脾臓と肺組織は4日間培養した。血清および培養上清をそれぞれLewis, Brown-Norway ratの脾細胞(リンパ球)と反応させフローサイトメトリーで計測したところ、Brown-NorwayからLewisへのallotransplantを行ったレシピエントラットから採取した血清および脾臓・肺組織の上清で特異的に、Brown-Norway由来のリンパ球に反応が起こることを証明した。さらに血清では移植後14日、脾臓培養上清では移植後28日に反応のピークが来てその後低下したのに対し、肺組織培養上清では反応性が経時的に上昇した。これらの結果は、肺内におけるリンパ組織新生の結果、ドナー特異抗体の局所産生がおこり、血清でのドナー特異抗体が検出できなくなった後も抗体産生が持続するというわれわれの仮説を支持するものである。 一方、肺組織の培養上清をBrown-Norway ratの気道内に投与する実験では、予想された肺病変はほとんど出現せず、Lewis ratに投与した場合と有意な差を認めなかった。投与する抗体の経路や量に問題があった可能性がある。 Lewis rat由来のfibroblastにBrown-Norway rat MHC class I (RT-1An)をプラスミドベクターを用いて発現させ、抗ドナー抗体の特異性をさらに証明する実験では、ベクターのtransfection効率が低く、現在手技の改善、およびtransfectionの対象をNIH3T3細胞に変更して実験を試みている。
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