研究課題/領域番号 |
24791461
|
研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
杉本 誠一郎 岡山大学, 大学病院, 助教 (40570148)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | 肺移植 / 虚血再灌流障害 / 急性拒絶反応 / 免疫寛容 |
研究概要 |
肺移植では虚血再灌流障害が移植肺の生存期間を悪化するとされているが、虚血再還流障害による移植肺生着への影響やその機序については解明されていない。本研究では肺移植後の虚血再灌流障害の制御機構を解明することと、虚血再灌流障害による移植肺生着阻害の機序を解明することが目的である。マウス同所性左肺移植モデルを用いて虚血再灌流障害を検討した結果、移植肺の虚血時間が延長し虚血再灌流障害が高度になると、移植肺内のIL-6のmRNAレベルや顆粒球数、血中のG-CSFが増加していた。これらの炎症性サイトカインは種々のシグナル伝達経路を利用して細胞内に伝達されるが、サイトカインシグナルを負にフィードバック制御するSuppressor of cytokine signaling(SOCS)ファミリーに着目し、特にIL-6やG-CSFを負に制御するSOCS3の役割を検討した。このため、本年度はまずマウス左肺門結紮モデルを用いて、SOCS3の温虚血再灌流障害における役割を検討した。コントロール群として野生型を使用し、SOCS3トランスジェニックマウスとSOCS3ノックアウトマウスを使用し、温虚血再灌流障害におけるSOCS3の役割を検討した。動脈血液ガス分析を用いた肺機能の評価では、SOCS3トランスジェニックマウス群はコントロール群と差がなかったが、SOCS3ノックアウトマウス群ではコントロール群より肺機能が悪化し、虚血再灌流障害が高度であった。また、組織像ではSOCS3ノックアウトマウス群は他の群よりも肺障害が高度になっていたが、フローサイトメトリーではSOCS3ノックアウトマウス群と他の群で、肺内の顆粒球集積にはあまり差がなかった。引き続き、マウス同所性左肺移植モデルを用いた冷虚血再灌流障害での検討を行う。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
SOCS3トランスジェニックマウス、SOCS3ノックアウトマウスともに順調に準備できており、今後もマウス肺移植モデルを用いて研究を進展させる。
|
今後の研究の推進方策 |
冷虚血再灌流障害モデルであるマウス同所性左肺移植モデルを用いて、コントロール群として野生型を使用し、SOCS3トランスジェニックマウスとSOCS3ノックアウトマウスを使用して、虚血再灌流障害におけるSOCS3の役割を解明する。更に、異系マウス間の免疫寛容状態で移植肺生着阻害におけるSOCS3の役割を検討する。マウス肺移植では同系のC57B6L/6(B6)→B6移植肺は組織学的に正常だが、異系のBalb/c→B6移植肺は術後7日目でヒト肺移植後と同様の急性拒絶反応を認める。MR1とCTLA4-Igは抗原提示細胞とT細胞の共刺激を阻害しT細胞の活性化を抑制するが、マウス肺移植後の急性拒絶反応はMR1とCTLA4-Igの2剤による免疫抑制(二重共刺激阻害Double Costimulatory Blockade:DCB)で抑制され、免疫寛容が導入される。ヒト肺移植では虚血時間の延長が移植肺の生存期間を悪化するため、マウス肺移植での冷虚血時間(CI)を通常の1時間から18時間に延長し、CIと急性拒絶反応の関係を検討する。Balb/cドナー肺を18時間 CI後にB6レシピエントに移植しDCBで免疫抑制すると、1時間 CIの場合と違い移植後7日目に高度の急性拒絶反応を認める。このDCBによる免疫抑制療法と1時間CI・18時間CIの異種移植を行う。SOCS3トランスジェニックマウスとSOCS3ノックアウトマウスをレシピエントに用い、18 時間CIでBalb/cドナー肺を用いた異系間肺移植を行い、DCBによる免疫抑制下で移植後7日目に動脈血液ガス分析やフローサイトメトリーなどで移植肺の評価を行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
|