研究概要 |
Heat shock protein 90 (以下Hsp90) は、AKT など癌で鍵となる多くのシグナル伝達蛋白の安定化に関与しており、Hsp90 阻害剤は癌治療薬として開発が進んでいる。さらに、Hsp90 阻害剤は放射線の増感作用が報告され、放射線治療への応用が期待できる。本研究は肺癌におけるHsp90 阻害剤と放射線の併用時の抗腫瘍効果の機序について検討し、肺癌における新しい治療法を確立することを目的とする。 平成24年度では、EGFR 変異肺癌細胞株PC9, H1975, H3255、KRAS 変異肺癌細胞株H358, A549、PIK3CA 変異肺癌細胞株H460、AKT 活性化を示さない肺癌細胞株H1299, H838 の 8 株を使用して、2 種類のHsp90 阻害剤(17-DMAG、NVP-AUY922)に対してHsp90阻害剤単独・放射線単独・両者の併用による抗腫瘍効果をMTSアッセイ・コロニーフォーメーションアッセイで評価し、放射線増感作用および非増感作用を示す細胞株群の同定を行った。 平成25年度は、EGFR変異肺癌細胞株HCC827, PC-9と、それぞれより作成したEGFRチロシンキナーゼ阻害剤(Gefitinib)に対する耐性株(HCC827-GRmet, HCC827-GRstem, PC-9-GRt790m)を用いてHsp90阻害剤 NVP-AUY922の抗腫瘍効果を、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤耐性株とその親株との差に注目して評価し、さらに放射線療法との併用による抗腫瘍効果も検討した。Hsp90阻害剤は耐性株(HCC827-GRmet, PC-9-GRt790m)においても抗腫瘍効果を示し放射線増感作用も認めたが、癌幹細胞様の性質を持った耐性株( HCC827-GRstem)においては抗腫瘍効果・放射線増感作用ともに乏しかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度として、EGFR 変異肺癌細胞株PC9, H1975, H3255、KRAS 変異肺癌細胞株H358, A549、PIK3CA 変異肺癌細胞株H460、AKT 活性化を示さない肺癌細胞株H1299, H838 の 8 株を使用して、2 種類のHsp90 阻害剤(17-DMAG、NVP-AUY922)に対して放射線増感作用および非増感作用を示す細胞株群を同定している。 2年目は、EGFR変異肺癌細胞株HCC827, PC-9と、それぞれより作成したEGFRチロシンキナーゼ阻害剤(Gefitinib)に対する耐性株(HCC827-GRmet, HCC827-GRstem, PC-9-GRt790m)を用いてHsp90阻害剤 NVP-AUY922の抗腫瘍効果を検討し、耐性株の特徴によりHsp90阻害剤の効果に差があることを見出している。
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