原発性肺癌の転移および再発には癌幹細胞の関与が指摘されている。我々は、原発性肺癌切除標本を用いて、肺幹細胞関連遺伝子の役割を検討した。 (1)まず、原発性肺癌40症例において以下の遺伝子のmRNAの発現を調べた。β-cateninをコントロール遺伝子とした。正常肺、癌組織の発現は、それぞれ、1. Sox9:0.60±0.05、0.23±0.44。2. CD133:0.15±0.28、0.69±1.54。3. Id2:1.75±0.17、1 .10±1.14。4. FoxA1:0.06±0.01、0.14±0.11。5. N-myc:0.01±0.01、0.04±0.08。以上より、Sox9(p=0.009)、CD133(p=0.0183)、Id2(p=0.0146)、FoxA1(p<0.0001)、N-myc(p=0.0109)の遺伝子は、癌部において、 mRNAの発現が高いことが示した。 (2)次にId2遺伝子のタンパク発現を原発性肺癌切除44症例の組織を用いて調べた。小細胞肺癌には発現せず(0/6)、肺腺癌の52%(12/23)、扁平上皮癌の14%(2/14)に発現していた。しかし5年全生存率が有意差を認めなかった。またId2発現陽性症例は、肺腺癌症例、分化度が高分化である症例、pT1症例との間に有意な相関を認めた。次に原発性肺癌127症例において、CD133の タンパク発現を検討した。CD133は、臨床病理学的因子(年齢、性別、組織型、分化度、pT stage、pN stage、pM stage)との相関は認めなかった。しかし、CD133発現は、5年全生存率(p=0.0001)および5年無再発生存率(p=0.0378)において予後不良因子であり、CD133遺伝子は、再発および予後に密接な役割を担っていることが予想された。
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