特発性自然気胸は若年男性に好発する頻度の高い疾患であるが、その原因は未だ不明である。やせ形、高身長など特有の身体的特徴を持ち、臨床的に本疾患は結合組織に何らかの脆弱性が存在する可能性がある。近年弾性繊維形成にFibulinという分子が関与している事が明らかにされてきており、Fibulin-5はオーガナイザーとして弾性繊維形成に関与する分子であることが判明している。また加齢黄斑変性や皮膚弛緩症でSNPによるFibulin-5蛋白の減少が報告されている。 本研究は臨床検体を用いて行う為、症例を蓄積しながら25歳未満を若年性自然気胸と定義し、若年性自然気胸群、25歳以上の気胸群、他疾患で肺切除が施行された群をコントロール群とし、3群間でFibulin-5の遺伝子、蛋白について、real-time PCR、western-blotを用いて定量的に測定した。 若年群でFibulin-5蛋白の減少が確認された為、症例を蓄積し同様の検討を行った所、若年性自然気胸群ではFibulin-5蛋白の減少が確認されたが、Fibulin-5遺伝子発現には差がないという結果であった。 Fibulin-5蛋白の減少の機序について、現在までアミノ酸置換を伴うSNPの報告が複数存在するため、Direct sequenceを行ったが、同様の機序は確認されなかった。 また、成人の肺で多く存在するFibulin-1蛋白発現について同様の検討を行ったが、3群間に差は認められなかった。Fibulin-5蛋白形成に関係する未知の遺伝子発現を検討する為に代表的な症例を用いてマイクロアレイ解析を行ったが、候補となる有力な遺伝子は同定されなかった。
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