研究実績の概要 |
microRNAの急性大動脈解離の病態への関与を究明する本研究では、発病のメカニズムを、臨床検体を使用し、遺伝子・分子レベルでの解析で明らかにすることを目的とする。
当施設倫理委員会での研究承認後、平成25年度7月から平成27年1月までに急性A型大動脈緊急手術施行症例の上行大動脈検体を合計35症例から採取した。このうち、phenotypeが同一(非血栓閉塞性、65才未満、上行~弓部大動脈にエントリーが存在)である6例を抽出、さらに共同研究機関である米国Stanford大学から取り寄せた移植ドナー由来の健常大動脈組織5例をコントロールとして、①mRNAに対してのマイクロアレイ(Agilent, SurePrint G3 Human GE 8 x 60K )と②miRNAに対してのマイクロアレイ(Agilent, SurePrint G3 Human miRNA 8 x 60K, Rel 19.0)双方を行い、miRNAと連動して発現が変動するmRNAの同定を行った。この結果、42545遺伝子からmiRNAによる発現調整を受ける可能性のある138遺伝子を抽出。また1368のmiRNAから2群間で発現変動する92miRNAも同定した。さらに過去文献検索により138遺伝子から病態に関与する可能性のあるTGF経路のBAMBI・TGFB1・ENGを、MMP経路のTIMPを、JAK2経路のJAK2などを同定した。現在、これらの遺伝子群のvalidationのqRT-PCRの他の患者サンプルも含めて実施している状況。miRNAとmRNA双方の網羅的遺伝子発現検索を行った報告はまだ本邦を含めて世界的にもなく、初めての研究成果となる。本研究内容は、2016年度の米国胸部外科学会で発表予定で、本年度中の論文化を予定している。
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