ヒト非小細胞肺癌により確立されたヒト非小細胞肺癌免疫不全マウスを用いてがん幹細胞の解析、肺がん幹細胞を標的とした画期的な治療法や、治療効果予測を開発するために以下のように実験を計画した;1) 免疫不全マウスを用いたがん幹細胞が高度に濃縮された腫瘍構築モデルの作成。2) 確立されたモデルにおける腫瘍再現性の確認。3) がん幹細胞に特異的に発現する分子の同定。4) がん幹細胞を治療標的とした治療法の基礎検討。5) 非小細胞肺がん幹細胞マーカーの検証。免疫不全マウス上で10代以上の継代が可能なマウス上の腫瘍株の作製に成功した。同時に、ヒト非小細胞肺癌検体においてlong non-coding RNAのHOTAIRの発現が悪性例に強く発現していることを発見した。そこで、肺癌の幹細胞性にHOTAIRがどのように関与しているかを検討すると、HOTAIRを強制発現させた肺癌細胞は免疫不全マウス皮下での腫瘍形成能を増強しなかった。しかし、尾静脈より投与すると、コントロール細胞に比べHOTAIR強制発現細胞が肝転移促進していた。また、HOTAIR強制発現細胞では細胞移動能を亢進させていた。これらのことから、肺癌悪性例で発現の高いHOTAIRは癌幹細胞性の一部の性質に寄与している可能性が示唆された。
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