研究課題/領域番号 |
24791481
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研究機関 | 独立行政法人国立がん研究センター |
研究代表者 |
菱田 智之 独立行政法人国立がん研究センター, 東病院, 医員 (40544664)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 臨床病理学的研究 |
研究概要 |
本研究の目的は、肺の高悪性度神経内分泌癌である、大細胞神経内分泌癌(LCNEC)における、がん幹細胞の同定の機能解析である。 本年度は、がん幹細胞マーカー候補の一つとされるpodoplainiに着目した研究を行った。癌の進展・増殖にはがん細胞のみならずそれを取り巻く間質細胞(cancer-associated fibroblast: CAF)の重要性が指摘されている。そこで、今回はLCNECおよび同じく高悪性度神経内分泌癌である小細胞癌(SCLC)切除例を対象にpodoplain陽性CAFの存在と臨床的特徴、予後との関係を検討した。 対象は、1993年から2011年までの間に当院で切除された、高悪性度神経内分泌癌115例(SCLC52例、LCNEC63例)(混合型SCLC, LCNECは除外)とし、podoplanin陽性CAFは、免疫組織染色にて50%以上podoplanin陽性のfibroblastを認めるものと定義した。podoplanin陽性CAFの存在は、陰性群にくらべ有意に予後良好(5年全生存割合:75% vs 45%, p=0.002)でこれは、SCLC, LCNECいずれのサブグループでも同様の結果であった(SCLC: 5年全生存割合74% vs46%, p=0.046; LCNEC: 74% vs 45%, p=0.020)。患者の年齢、性別、リンパ節転移の有無、脈管浸潤の有無など臨床病理学的因子との多変量解析の結果、podoplanin陽性CAFの存在は、有意な予後良好因子であった。因みに、がん細胞でのpodoplain発現は、非発現症例と比べ予後がやや不良な傾向であったが、有意差は認めなかった。がん幹細胞マーカーの発現様式は、がん細胞での発現のみならずCAFにおけるの発現も重要であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
候補となるがん幹細胞マーカーの選定に時間を要したこと。 解析対象に、当院での保存期間を過ぎた、過去5年以上前の症例が相当数含まれているため、免疫組織染色に用いる組織ブロックの取り寄せ、ならびに薄切標本の作製に時間を要したこと。 が挙げられる。
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今後の研究の推進方策 |
予定している、大細胞神経何分泌癌(LCNEC)ならびに小細胞癌(SCLC)外科切除例の組織切片を用いた、免疫組織染色法によるがん幹細胞マーカーの発現解析を速やかに終了させる。LCNECとSCLCの間でがん幹細胞マーカーの発現様式が異なれば、治療前の生検検体におけるがん幹細胞マーカーの発現で、LCNECとSCLCの鑑別が可能かどか検討する。もし可能となれば、現状では治療前生検で診断が困難なLCNECの診断向上に寄与する可能性がある。また、がん幹細胞マーカーの発現と予後など臨床データとの関係も検討する。予後と強い相関のある分子が同定されれば、LCNECおよびSCLCの細胞株から同分子の抽出を行い、機能解析を行う。更に、倫理審査および患者からの十分なインフォームドコンセントを得た後、新鮮切除検体からも同分子の抽出を試み機能解析を行う計画である。
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次年度の研究費の使用計画 |
がん幹細胞マーカ(CD133, CD44, CD166, ALDH, Oct-4, NANOG, BRCA1)の免疫組織染色に用いる抗体の購入。実験にかかる人件費。研究成果発表のための、旅費、学会参加費など。
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