研究課題/領域番号 |
24791482
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
福井 高幸 名古屋大学, 医学部附属病院, 助教 (70463198)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 肺癌 / 分子標的治療 / EGFR / 細胞株 |
研究概要 |
日本人肺癌の約40-50%には上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子の活性型変異が認められ、変異を有する症例では高率にEGFRチロシンキナーゼを阻害する薬剤(EGFR-TKI)が有効であることがわかり臨床応用されているが、、TKI 治療にて初期には奏効したほとんどすべての症例が、後には抵抗性となることがわかっている。この耐性の獲得機序を解明するため耐性細胞株の樹立を試み、それらの細胞株を用いてEGFRやその下流経路の遺伝子異常の有無について解析を行うこととした。 今年度われわれはまず細胞株の樹立にとりかかった。名古屋大学呼吸器外科で治療(手術)された胸部悪性腫瘍の切除標本あるいは胸水を用いて従来の培養法あるいは新しく開発された細胞培養法であるCTOS 法を用いて微量な検体から細胞株を樹立する予定であったが、CTOS法は物品の整備が間に合わず従来の液体培地を用いた初代培養を開始した。約半年間で20症例から切除標本を得ることができ、そのうち3症例で細胞株の樹立に成功した。また現在も継代しつづけている標本もある。 しかし、本年度はEGFR-TKIに対する耐性を獲得した肺癌症例の切除標本を得ることができず、耐性細胞株の樹立ができなかった。今後は引き続き症例の集積、初代培養を継続し耐性獲得した細胞株の樹立を目指し、また樹立に成功した細胞株をもちいてEGFRに関係する遺伝子異常の有無の解析を行う予定である。また肺癌以外の胸部悪性腫瘍(中皮腫、胸腺腫など)についても細胞株の樹立を試みていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
平成24年度から勤務先が愛知県がんセンターから名古屋大学に変更となった。これに伴い、研究体制(指導、研究設備)も大きく変化し、特に研究室は大幅な縮小となった。研究継続のためまず環境整備から開始し細胞培養を開始するために5,6ヶ月を要した。 また名古屋大学呼吸器外科では肺癌に対するEGFR-TKI治療をしておらず、耐性獲得後の標本を得るのが困難であった。
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今後の研究の推進方策 |
新たな検体が得られた場合には、前年度に引き続き細胞株の樹立をおこなう。また耐性に関わる候補遺伝子解析をおこなう。 TKI治療に関わっている呼吸器内科とも情報を共有し、耐性獲得症例について標本を得るべく努力する。 肺癌以外の胸部悪性腫瘍に関しても初代培養を開始し同様に細胞株の樹立を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
昨年度に引き続き研究室の整備(クリーンベンチの整備、CO2インキュベーターの維持)を継続するためにも一部の研究費を使用する。細胞培養に必要な培地や免疫染色のための抗体など試薬の購入に研究費を使用する予定である。また樹立に成功した細胞株に関してはマウスを用いた動物実験を行い目的達成を目指す。 さらに情報収集や細胞株樹立の報告、遺伝子解析結果を発表するために海外を含む各種学会等に出向く予定である。
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