【背景】プログラニュリン (Progranulin: PGRN)は、神経細胞を含む種々の体細胞で発現している成長因子であり、抗炎症作用を有することが知られているが、中枢神経系の急性傷害に対する効果は不明である。今回我々は、マウス脳梗塞モデルを用いPGRNの神経保護作用を検討した。 【方法】マウス中大脳動脈閉塞による2時間虚血-22時間再灌流モデルを用いてPGRNを脳室内投与し、虚血24時間後に脳梗塞体積および神経症状の評価を行った。また、作用機序を明らかにするために、免疫染色、ウエスタンブロット法、ゼラチングラフィー法により梗塞巣における好中球の浸潤、nuclear factor-kappa B (NF-κB)、matrix metalloproteinase-9 (MMP-9)等の炎症関連因子の活性化について検討した。 【結果】PGRN投与群では対照群と比較して、虚血2時間後の投与で用量依存的に脳梗塞体積、脳浮腫を減少させ、神経症状および長期生存率を改善した。PGRN投与群においては対照群と比較し、脳梗塞巣における好中球浸潤およびNF-κB、MMP-9の活性化が抑制されていた。 【結語】PGRNはマウス脳虚血-再灌流モデルにおいて好中球の浸潤を介した炎症反応を抑制することで急性期における神経保護効果を示した。これらの結果は、PGRNが急性期脳梗塞における新たな抗炎症療法となり得る可能性を示唆しているものと考えられた。 【成果報告】これらの研究成果を以下の通り国際学術誌、国際学会にて発表した。
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