脊髄損傷後、損傷尾部の運動麻痺に伴う、筋肉が廃用萎縮すること、また、脊髄運動神経が変性することが報告されている。当グループでは、廃用萎縮と脊髄運動神経の関連性を調べるためにTh7/8脊髄挫滅モデルラットを作成し、非損傷群、非損傷+下肢固定群、損傷群、損傷+下肢固定群の4群を作成し、筋委縮に伴い脊髄運動神経のL5における脊髄前角の数と形態について測定した。損傷3週後において、非損傷群、非損傷+下肢固定群については、α運動神経の数に変化はなかったが、損傷群については有意に低下しており、損傷+下肢固定群においては、損傷群と比べても有意に低下していた。また、損傷群においては脊髄前角細胞の形態も変性していた。脊髄前角細胞の細胞死・変性について調べるために、脊髄およびヒラメ筋における神経栄養因子の分泌量を測定すると、GDNFにおいて、脊髄損傷および下肢固定に伴い、ヒラメ筋でのGDNFの産生が有意に低下すること、それに伴い、損傷+下肢固定群においてのみ脊髄L4/5におけるGDNFの含有量が有意に低下することを見出した。これらのことから、廃用萎縮に伴い筋組織からのGDNFの減少が脊髄前角の変性・細胞死に関与していると推測し、GDNFを損傷筋に注入することに損傷+下肢固定群において脊髄前角の細胞死・変性を改善できることを見出した。 この知見をもとに、損傷+下肢固定したラットのヒラメ筋にPBSを筋肉注射した群とGDNFを注入した群を作成するとGDNF群において有意にL5脊髄運動神経の減少を抑えられたを見出した。
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