研究実績の概要 |
我々は悪性神経膠腫幹細胞とそのnischeを標的とした治療法の確立のため、悪性神経膠腫幹細胞に発現しているCD166/Activated leukocyte cell adhesion molecule(ALCAM)という分子に注目し、本研究を遂行した。まず我々は悪性神経膠腫におけるALCAMの発現を検討し、その後同分子の機能的役割についての検討をin vitroおよびin vivoで行った。結果ALCAMは悪性神経膠腫のみならず、腫瘍血管にも発現していることが示された。一方悪性神経膠腫細胞株であるU87MG及びU251を用いALCAMノックダウン株を作成したところ、ノックダウン細胞から採取した培養上清はコントロール細胞から採取した培養上清と比して血管新生を抑制した。一方in vivoでは形成された腫瘍内のmicrovascular densityでは有意な差は認めなかったが、切片当たりの血管面積及び1血管当たりの血管径はALCAMノックダウン株で著明に抑制されていた。またコントロール細胞とノックダウン細胞における血管新生に関与する分子の発現の相違を検討したところVEGFの発現には明らかな差は認めなかったが、血管新生に関わるcytokineであるinterleukin8の分泌に差が認められた。 これまでの報告から悪性神経膠腫幹細胞は腫瘍血管周囲のperivascular nischeに存在することが示唆されている。本研究でALCAMは悪性神経膠腫のみならず腫瘍血管にも発現し、なおかつ本分子はin vitro, in vivoの研究で腫瘍血管新生に関与していることが示されていることから、ALCAMは悪性神経膠腫幹細胞とそのnischeに対する治療標的分子の候補となることが示された。 尚本研究結果を踏まえて、現在論文投稿を進めている状況である。
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