研究課題/領域番号 |
24791501
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
田中 一寛 神戸大学, 医学部附属病院, 助教 (70467661)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | mTOR |
研究概要 |
神経膠芽腫(悪性グリオーマ)は最も予後不良な悪性脳腫瘍の一つである。最近の遺伝子解析においてThe mammalian target of rapamycin (mTOR) は神経膠芽腫治療の効果的な分子標的の一つとして取り上げられている。mTOR はEGFR の下流に位置し、複数の蛋白から構成される2種類の複合体として存在しmTORC1 およびmTORC2 と呼ばれる。申請者は、EGFR 遺伝子の増幅・変異を示すグリオーマ細胞ではmTORC2 シグナルが活性していることを報告した(Tanaka K et al. Cancer Discovery, 1(6):524-538. 2011)。遺伝子発現の制御メカニズムとしてマイクロRNA(miRNA)の関与が近年注目されている。そこで、EGFR 遺伝子の増幅・変異によって引き起こされるmiRNA を同定し、そのmiRNA によるmTORC2 制御の可能性と制御機構を解明することを目的とした。 悪性グリオーマでは様々なmiRNAの発現が特異的に増減している(Silver J et al. BMC medicine, 6:14. 2008)。その中からmiRNA137および 218に注目し、mTORC2の主要構成タンパクであるRictorの発現レベルを測定した。しかし、ヒト由来グリオーマ細胞株U87あるいはU251細胞へのmiRNA137および 218を遺伝子導入によってRictorの発現レベルの低下はなかった。 今後はsiRNA法によりグリオーマ細胞のRictor発現抑制を行って、網羅的なmiRNA測定を行う予定である。また、mTORは腫瘍内代謝リモデリングとも密接な関係が報告されており、グリオーマ細胞におけるIDH変異に関連するmiRNAについても解析を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
悪性グリオーマでは様々なmiRNAの発現が特異的に増減している(Silver J et al. BMC medicine, 6:14. 2008)。その中からmiRNA137および 218に注目し、mTORC2の主要構成タンパクであるRictorの発現レベルを測定した。特に口腔癌においてはmiRNA218のターゲットとしてRictorが報告されている(Uesugi A et al. Cancer Res. 71:5765-78, 2011)。 しかし、ヒト由来グリオーマ細胞株U87あるいはU251細胞へのmiRNA137および 218を遺伝子導入によってRictorの発現レベルの低下はなかった。したがって新たなmiRNA候補を吟味しており、網羅的な解析も必要と考えているため。
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今後の研究の推進方策 |
今後はsiRNA法によりグリオーマ細胞のRictor発現抑制を行って、網羅的なmiRNA測定を行う予定である。しかし、Rictorや他のmTORC2構成タンパクの発現に関与するmiRNAが同定されないことも考えられる。その場合、mTORは腫瘍内代謝リモデリングとも密接な関係が報告されており、グリオーマ細胞におけるIDH変異に関連するmiRNAについても解析を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
近年、悪性グリオーマにおいてイソクエン酸脱水素酵素(isocitrate dehydrogenase (IDH))の変異が発見されたが、IDH変異による様々な異常は十分解明されていない。グリオーマにおいては様々なmiRNA異常が認められ、申請者の研究室も報告してきた(Sasayama T et al., Int J Cancer , 2009、Tanaka H and Tanaka K et al., J Neuro-Oncology, 2013)。多数のmiR発現異常がグリオーマの腫瘍形成、悪性化に寄与していると考えられているが、IDH変異とmiRNA異常との関連性については殆ど解析されていない。mTORは腫瘍内代謝リモデリングとも密接な関係が報告されており、Rictor発現に関与するmiRNAがIDHなどの腫瘍細胞の遺伝子変異にかかわっている可能性があると考えた。そこで、IDH変異陽性グリオーマでのmiRNA異常を明らかにし、IDH変異をもたらすmiRNA異常や、IDH変異により生じるmiRNA異常と腫瘍発生、悪性化との関連性について解析することを計画している。
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