研究課題/領域番号 |
24791502
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
道上 宏之 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (20572499)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 脳腫瘍 / ホウ素化合物 / ホウ素中性子捕捉療法 / BNCT / ペプチド |
研究概要 |
研究背景 悪性脳腫瘍特に膠芽腫は、予後の改善が見られない悪性度の高い疾患の一つである。治療抵抗性の原因として、腫瘍と正常部の境界が無く、腫瘍が正常脳へ浸潤拡大することが原因として挙げられる。膠芽腫に対して手術療法・化学療法・放射線療法の複合的な治療が第一選択であり、加えてホウ素中性子捕捉療法(BNCT)により予後が延長するとの報告がある(Kawabata S. et al, J Radiat Res, 2009)。 研究成果 悪性脳腫瘍に導入可能なBSH結合型のホウ素ペプチドの作成に成功した。 BSHはこれまでに細胞内への導入ができないため、臨床研究では使用されているが、その効果には疑問点が多かった。 今回、キャリアペプチドを作製し、そこへBSHを複数個結合させ、さらに細胞膜通過ペプチドと結合させることにより複数のBSHを一度に細胞内へ導入する。今後キャリアペプチドの構造的な検討や複数個BSHとの複合体の水溶性や溶解度、または、毒性についての検討を行った。ホウ素化合物(BSH)をキャリアペプチドと架橋し、最適なキャリアペプチドのデザインを行った。より効率よく細胞内へとBSHを運ぶために、多数のBSHとペプチドを融合させたペプチドキャリアに細胞膜通過ペプチドを結合させた第二世代キャリアペプチド化BSH-peptideの開発ほぼ成功した。多数のBSHを一つのペプチドにて運ぶことにより効率よく細胞内へと導入可能である。BBBが破壊されている脳腫瘍部でのみBSH-peptideが漏出するため、腫瘍細胞内へと取り込まれる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
すでに、脳腫瘍モデルにおける新規ホウ素製剤の薬剤分布についての結果を得ている。 U87MG delta EGFRのヒト悪性神経膠細胞に対してBSH-peptideを投与し、6時間毎に細胞を回収し、ICP-MS(誘導結合プラズマ-質量分析器)にてホウ素濃度を測定を行った。 次に、ヌードマウス脳内に移植し、脳腫瘍モデルマウスを作製する。BSH-peptide尾静脈より投与後、免疫組織染色にて臓器内のホウ素化合物BSHを観察した。特に、正常脳と脳腫瘍部でのホウ素化合物の局在について検討を行った。投与したホウ素製剤は、腫瘍部のみに限局し、正常部ではほとんど観察されなかった。今後は、様々な投与量と時間経過における腫瘍部および正常脳のホウ素濃度を測定し、中性子照射の最も適したタイミングを決定する。同時に、血液中の逸脱酵素を検出し安全性・毒性についての検討を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
ホウ素中性子捕捉療法による治療効果 中性子照射は、大阪府熊取町の京都大学原子炉実験所にて施行する(保安教育受講済み、使用許可有り)。上記で決定された最も有効な投与時間においてコロニーフォーミングアッセイを行い、細胞レベルでの投与濃度、中性子照射時間と細胞増殖抑制効果について検討を行う。 同時に、コンピューターシミュレーションによるホウ素製剤の局在(核内、細胞質内、細胞膜上、細胞膜外など)による中性子照射による抗腫瘍効果の検討を行う。 U87MG delta EGFRヒト悪性神経膠腫瘍を用いた脳腫瘍モデルマウス(BALB/c nude (nu/nu)mice 8週齢、メス)を作製し、ホウ素ペプチド(BSHペプチド)を投与後、上記アッセイで求められた至適濃度、至摘投与時間にて中性子照射を行う。ホウ素中性子捕捉療法による治療後治療効果検討と組織学的検討(腫瘍部および正常部)を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
ペプチド及びホウ素製剤の購入費用。悪性脳腫瘍細胞の培養のために培養液及びその添加剤費用。組織染色および細胞染色するための抗体及び染色費用。動物モデル作成のための動物購入費用および維持費用。脳腫瘍モデル作成のための費用。京都大学原子炉実験所で実験を行うための旅費及び諸費用。学会発表及び学会参加のための費用。 次年度使用額(B-A):17428円が生じたが、これは作製したBSHペプチドの毒性が低く、使用するモデル動物が少なく済んだことによる、また順調に実験が遂行できたことによる。
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