アテローム血栓性脳梗塞の一部は粥状動脈硬化の破綻による血栓形成とされているが、超急性期には画像所見に乏しく診断には熟練を要す。そこで病態を反映し時間的にも真の急性期を反映する脳梗塞急性期血液診断マーカーが必要とされてきた。動脈硬化の病態に深く関与している炎症性サイトカインオステオポンチン(OPN)は活性型トロンビンによって切断されトロンビン切断型OPN(trOPN)となる。申請者はtrOPN血中濃度が頸動脈狭窄患者において合併症のない本体性高血圧患者よりも有意に高値であり、頸動脈ステント留置術後、早期に血中trOPN濃度が上昇することを明らかにしてきた。これは血漿trOPN値が粥状硬化の病態と関連があり、かつ急性期マーカーと成りうることを示唆している。しかし、trOPN血中濃度はきわめて低く、通常のELISAプレートでは検出感度が不足し評価不能の症例が多数あった。 以上をふまえて(1)血中トロンビン切断型オステオポンチン(trOPN)濃度が時間的・病態的背景に基づいた脳梗塞急性期血液診断マーカーになりうるか、(2)血中trOPN濃度が将来の心血管イベント再発を予測しうるかを明らかにすることである。血中trOPN濃度は微量でありマイクロプレートを用いるELISAでは検出感度や試料コストの面で問題があった。本研究では、高感度化、試料量削減が可能である新規技術・キャピラリーイムノアッセイを用いて従来法では検出不可能であったtrOPNを検出・定量を目指した。 平成24年度において私は、以下のことを行った。 1.キャピラリーELISAを作成し、低濃度trOPN測定を可能とした。 内径100μmのキャピラリーに高密度(マイクロプレート比10倍)・低容量(同比1/500倍)にて抗体を固相化し、キャピラリーELISAを作成した。従来法で作成したマイクロプレートでは50pmol/L以下は定量が困難であったtrOPN濃度を0.16pmol/Lまで測定可能とした。(学会発表(下記)、投稿中) 2.対象患者登録のデータベースの作成とサンプルの収集を行った。 研究協力病院すべてにおいて倫理委員会の承諾を得、研究を開始した。2012年5月から9月24日現在で28症例の脳梗塞患者が登録されている。すべての患者に対し研究目的を説明し文書による同意を得ている。今後引き続き症例を増やし、解析を行っていく予定である。
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