研究課題
近年の高齢者、生活習慣病患者の増加は将来的な認知症患者の増加につながることが予想されており、その対策が喫緊の課題となっている。これまで我々は脳内アンジオテンシンII2型(AT2)受容体が脳保護効果を持ち、認知機能に関与していることを報告してきた。認知症の原因の一つである血管性認知症のモデルマウスで認知機能の低下が認められるが、AT2受容体刺激薬(C21)を投与することで改善効果があることを確認している。現在、詳細なメカニズムを検討し、論文作成中である。また、アルツハイマー病は認知症の主な原因の一つであり、その治療薬としてN-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体阻害薬、メマンチンがある。脳においてNMDA受容体は神経伝達に重要であるが、その過剰活性化は神経細胞死を誘導することが報告されている。また最近、アンジオテンシンIIとNMDA受容体の相互作用が報告された。そこで、C21とメマンチンの併用による認知機能改善効果について認知機能低下が確認されている糖尿病モデルマウス(KKAy)を用いて検討した。KKAyを無投薬群、C21およびメマンチン単独投与群、併用投与群を作成し、4週間後モリス水迷路テストにて認知機能を測定した。野生型マウスに比べてKKAyで認知機能が低下していた。C21およびメマンチン単独投与群では無投薬群に比べて認知機能の改善傾向が認め、併用投与することにより有意に改善していた。そのメカニズムとして、脳血流量、神経伝達効率はC21単独および併用投与群で増加していた。海馬におけるアセチルコリン濃度を検討したところ、各単独投与群で有意に増加していたが、併用投与群でさらに増加していた。以上のことから脳内AT2受容体とNMDA受容体が相互作用しており、糖尿病に起因する認知機能の予防・改善にAT2受容体刺激およびNMDA受容体調節の併用が有用である可能性が示唆された。
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Eur J Pharmacol
巻: 724 ページ: 9-15
10.1016/j.ejphar.2013.12.015.