研究課題
一過性中大脳動脈閉塞による脳梗塞巣核心部には、Iba1とNG2 chondroitin sulfate proteoglycan (NG2)の両方を発現するBINCs (Brain Iba1+/NG2+ Cells)が多数集積する。BINCsは単球由来のマクロファージであり、Iba1はマクロファージのマーカーである。BINCsは、IGF-1やHGF等の神経保護的ペプチドの発現レベルが高く、実際に重症ラット脳梗塞モデルの病巣にBINCsを移植すると予後が大きく改善することが分かってきた。本研究では、虚血病巣核心部を取り囲む周辺領域に、BINCsとは異なるNG2陽性細胞の存在を明らかにした。特に、核心部にごく近い領域では、マイクログリアがNG2を発現し、更に貪食細胞マーカーであるCD68を発現していた。これらのNG2陽性マイクログリアは骨髄移植実験から内在性マイクログリア由来であると考えられた。更にアポトーシス神経細胞を認識する受容体であるTREM-2を発現し、実際にNeuN陽性の神経細胞片を細胞内に取り込んでいる像が観察された。核心部から距離を経るにつれ、NG2の発現は失われ、次第に活性化マイクログリアは見られなくなった。梗塞巣核心部から放出される生理活性物質の濃度勾配がこのようなマイクログリアの反応を産み出しているものと考え、梗塞巣で発現量が多いTGF-β1に着目した。一次培養マイクログリアにTGF-β1を添加するとNG2の発現が誘導され、この作用はTGF-β1阻害剤で抑制された。BINCsの培養上清を添加しても同様の結果が得られた。また、TGF-β1はマイクログリアのTREM-2 mRNAの発現量増加させた。以上の結果からNG2がマイクログリア/マクロファージによる貪食作用のいずれかのプロセスに関与し、NG2発現誘導因子としてTGF-β1が関与していると考えられる。
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Glia
巻: 62 ページ: 185-198
10.1002/glia.22598