研究実績の概要 |
基盤研究にてプロモータ領域のDNAメチル化が髄膜腫の再発傾向と強い関連を認めた5遺伝子(IGF2BP1,HOXA6,HOXA9,PENK,UPK3A)について、これらの遺伝子の機能的意義と、実際の臨床検体における蛋白発現状態を検証するため実験を行った。研究開始後に立ち上げたbrain tissue bankが機能し、頭蓋内腫瘍の臨床凍結検体が平成27年度までに250例(うち髄膜腫約80例)に達したため、本年度この中からWHO gradeⅠ(組織学的良性),Ⅱ及びⅢ(組織学的悪性)の髄膜腫検体を抽出し、western blottingにより上記5遺伝子の蛋白発現解析を行った。観察期間が短いため基盤研究でみた再発の有無ではなく組織学的悪性度との関連を評価したが、HOXA9にてgradeⅢ(組織学的高悪性度)に強く蛋白発現する傾向がみられ、またIGF2BP1は検体間の発現の差異が大きく、形質との関連を評価する価値があると判断している。また、遺伝子の機能解析についてはIGF2BP1を中心に研究をすすめてきた。野生株でIGF2BP1を発現する悪性髄膜腫細胞株(HKBMM)に対しshRNAベクターによるIGF2BP1遺伝子ノックダウン株を作成したところ、同細胞株の放射線耐性が低下し線量8Gy照射24-48時間後に著明な細胞死が生じる結果が得られた。しかしながら再現実験の結果が安定せず、標的遺伝子のノックダウン以外の形質変化が出ている可能性が疑われたため、細胞株の交換や他の悪性髄膜腫細胞株(IOMM-Lee, KT21MG1)の使用、誘導型発現ベクターやゲノム切断法など異なる手段でのノックダウン及び発現強化などの実験を続けたが、放射線感受性に関し安定して再現性のみられる細胞株は得られず、期間中に結果の証明に至らなかった。
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