研究課題
脳静脈虚血は、比較的軽度かつ長時間持続する虚血を特徴とし虚血巣や周辺組織にはその際に様々な修飾が加えられている可能性がある。本研究では脳静脈虚血における局所の神経幹細胞の発現を調べ、神経幹細胞をこの脳静脈虚血分野への応用・展開するための研究基盤を確立する事を目的とした。具体的には脳静脈虚血における神経幹細胞の発現動態を検討するため、以下の実験を施行した。Wister rat(250g前後:オス)を脳静脈虚血群・コントロール群の2群に分けた。包水クロラール腹腔内投与で麻酔し、静脈ライン・動脈ラインを確保した。腹臥位にてStereotactic frameに頭部を固定し、左頭頂部を開頭(8x16mm)した。Rose Bengal dyeの静脈内投与とfiberoptic illuminationを用いて光凝固法で2本の隣接する脳表静脈を閉塞させた。コントロール群では開頭のみ行った。静脈閉塞の1・3・7・14日後に、ラットを10%formaldehydeにて還流固定し大脳を摘出し、局所を冠状断としてパラフィン固定した。5μmの厚さで切片を作成しヘマトキシリン・エオジン染色ならびに、神経幹細胞マーカーであるAnti-Nestin抗体の免疫染色を行った。抗Nestin抗体の免疫染色では、脳静脈虚血群において虚血巣周辺に発現を認めたが、当初の予想より広範囲な大脳半球全体に陽性細胞が散在する標本が多く見られた。脳静脈虚血に特異的な結果と考えられ、この病態解明のため追加免疫染色によるNestin陽性細胞のさらなる解析を試みたが、有意な結果が得られなかった。
4: 遅れている
モデルラット作成は過去の手技を踏襲しほぼ予定通りの実施であるが、本年度に実施した神経幹細胞の各種免疫染色については、有意な結果が得られるほどの安定した手技を確立することができていない。
研究期間の延長を申請した。引き続き安定した免疫染色手技の確立を目指す。万一安定した手技が確立できなければ、局所神経幹細胞研究の基礎研究として局所脳血流の研究を実施することも念頭に置いている。
昨年得られた実験結果の詳細な検討を免疫染色で行ったが、安定した手技が確立できず優位な結果が得られなかった。よってそれ以降の研究に進むことができずに次年度使用額が生じた。引き続き安定した免疫染色手技の確立を目指して、一次抗体・二次抗体・発色色素などの物品費、染色のための人件費、その他データ解析の為に充てる予定である。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件)
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10.1007/s11060-013-1258-4.
脳神経外科速報
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