神経幹細胞を脳静脈虚血分野へ応用・展開するための基盤研究として、脳皮質静脈閉塞時における局所の脳血流動態の変化についての研究をおこなった。 雄ウィスターラットの隣接した 2本の脳皮質静脈を、ローズベンガル色素と緑色光を用いた光凝固法により順に閉塞させた。静脈閉塞の直前から二本目の静脈閉塞30分後まで10分間隔でレーザースペックル血流画像装置を用いて開頭野の局所脳血流を非侵襲的に観察した。得られた画像において、2本の静脈間(A)と1本目の閉塞静脈の近傍(B)の二カ所に関心領域を設定し脳血流の経時的変化を測定した。また、静脈閉塞3日後に灌流固定を行い、ヘマトキシリン・エオジン染色にて脳梗塞の有無を評価した。 関心領域A(2本の静脈間)・B(1本目の閉塞静脈の近傍)ともに脳血流が1本目の静脈閉塞により約20%強低下した。2つ目の静脈閉塞によって関心領域A(2本の静脈間)では約50%減少したが、関心領域B(1本目の閉塞静脈の近傍)では更なる低下は認められなかった。2本の皮質静脈間の脳血流は静脈閉塞毎に段階的に血流が低下した。局所脳血流動態は関心領域A(2本の静脈間)と関心領域B(1本目の閉塞静脈の近傍)間で統計学的有意差を認めた(P<0.05)。すべてのラットで脳皮質領域に広がる静脈梗塞がHE染色により確認された。 脳静脈虚血と内在性神経幹細胞発現誘導との関連性・空間的時間的分布など依然不明な点も多く、この詳細な脳血流動態の変化をとらえた結果が更なる研究発展に寄与すると考えられる。
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