超高磁場MRIである7テスラの静磁場における医療機器の安全性や有用性に関して研究を行った。本研究は高磁場化が進んでいるMRIに対して、現状使用されている医療機器の開発が追いついていないため今後、超高磁場でのMRI撮影において不具合が出る恐れがあるため、現状及び今後の問題点を抽出する研究である。本研究では、現在脳神経外科領域で使用されている医療機器の中で、脳動脈瘤用クリップを用いて画像評価における有効性及び撮影時の安全性に関して評価を行った。現在使用されている脳動脈瘤用クリップは素材によって、チタン合金、純チタン、コバルトクロム合金の3種類に大きく分けられる。 画像評価に関しては、3種類いずれもクリップ周囲の磁化率アーチファクトを認めた。このアーチファクトはチタン合金、純チタンではクリップ周囲に出現するも、頭部撮影範囲全体には影響を及ぼさなかった。しかし、クリップ周囲の構造を確認することは不可能であり、7テスラの高磁場における画像評価に影響を与える事が確認された。コバルトクロム合金に関しては、非常に大きなアーチファクトによって、頭部撮影範囲全体に及ぶ磁化率アーチファクトを認め、7テスラの高磁場においてコバルトクロム合金を留置されている場合は撮影画像の評価は全く不可能となる事が確認された。 安全面に関しては、純チタン及びチタン合金製のクリップはMRI撮影時の移動(吸引力)は認めたが、撮影を行えないほどの力は受けないため、7テスラの静磁場でも撮影は可能と思われた。コバルトクロム合金においては移動(吸引力)は非常に強く、MRIの金属撮影安全基準に照らし合わせると、撮影は危険であり不能であることが確認された。 以上から、現在脳神経外科領域で使用されている脳動脈瘤用クリップは今後超高磁場での撮影には不具合が出る可能性が高いため、高磁場に耐えうるクリップを開発することは急務であると考えられた。
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