研究課題
本研究は、独自のYeast Two Hybrid法により、新たに見出したヒト成長ホルモン(hGH)と酵素タンパク質(以下、Xと称する)間の相互作用を基盤とする。最終的には、この相互作用を制御し得るペプチドの創出を出発点として、成長ホルモン産生腫瘍の新たな分子標的治療へと展開することを目指している。当該年度は、1.前年度で明らかにした相互作用領域の更なる絞り込み、及び、2.酵素Xの一時的、恒常的発現抑制時におけるhGHの相互作用領域(約300アミノ酸)を出発点として、さらなる部分欠損を導入したタンパクを大腸菌にて発現・精製し、hGHとの相互作用を検討したところ、hGHとの相互作用に必要・十分な領域を約90アミノ酸に絞り込んだ。また、酵素XとhGH間の相互作用に必須のアミノ酸残基を特定するために、アミノ酸置換による相互作用の消失等を現在確認中である。2については、既に、siRNAを用いた酵素Xの一過性発現抑制の結果、hGH(一過性に発現)の分泌が抑制されることを確認している。ここで観察された抑制効果の詳細をより容易に解析し得る系の確立を目的として、前年度に樹立したhGH恒常的発現株を基に、Xに対するsiRNAも恒常的に発現させることによって、酵素Xの発現が恒常的に抑制された細胞株を新たに樹立した。同細胞株を用いて、酵素Xの発現低下が、hGHの細胞外分泌(通常培養条件下、無血清状態、及び、cAMPをはじめとする各種分泌刺激剤添加時等の条件下)に及ぼす影響について、ウエスタンブロット法、ELISA法を用いた定量的解析を進行中である。
2: おおむね順調に進展している
hGHと酵素X間の相互作用領域のマッピングは順調に推移しており、既にペプチドを用いた相互作用抑制の試みを開始できる段階にある。他方、細胞での酵素Xの発現抑制がhGH分泌に及ぼす効果の解析については、非常に予備的実験の段階ではあるものの、酵素Xの一過性発現抑制時と恒常的発現抑制時が異なった影響を及ぼすことを示唆するかもしれない興味深い、しかし、予想外の結果を得つつある。従って、当初は予定していなかった「一過性発現抑制実験のより詳細な検討」や、「一過性発現抑制と恒常的発現抑制の厳密な比較を可能にする実験系の確立」等が必要となる可能性が生じている状況である。
hGHと酵素X間の相互作用表面の詳細な解析を引き続き進めるとともに、その情報を元に、既に確立した試験管内相互作用解析系にて、小ペプチドによる相互作用の抑制を試みる。もし相互作用を抑制するペプチドが同定されれば、細胞における同ペプチドの効果の検証へと展開する予定であり、また、ペプチドをミミックする低分子化合物の創出も可能となる。他方、酵素XのhGH分泌における役割の検証については、酵素X発現の一過的抑制、恒常的抑制の効果を、より詳細に解析する予定である。
細胞での酵素Xの発現抑制がhGH分泌に及ぼす効果の解析について、予想外の結果が出ている面があり、当該部分を掘り下げた実験系の確立が急務となったため。25年度消耗品費未使用分については、ウエスタンブロット法での定量が困難な分泌タンパクの定量化を行うためのELISA kit購入、新たなsiRNA合成費用などに充当する。
すべて 2013
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Analytical Biochemistry
巻: 443 ページ: 113-116
Endocr J
巻: 60 ページ: 369-373