研究課題/領域番号 |
24791518
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研究機関 | 帝京平成大学 |
研究代表者 |
水谷 晃子 帝京平成大学, 健康メディカル学部, 講師 (80465252)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 成長ホルモン / 下垂体 / 分泌 / 相互作用 |
研究実績の概要 |
本研究は、我々独自の酵母Two Hybrid法により見出したヒト成長ホルモン(hGH)と酵素タンパク質(以下酵素Xと称する)間の相互作用を基盤として、ホルモン分泌を制御することが可能な相互作用抑制ペプチドを創出することにより、特に成長ホルモン産生腫瘍の新たな分子標的治療への創薬シーズを確立することを最終目標としている。平成26年度では、1.酵素XのhGH分泌における役割を、酵素Xの発現を一過性、もしくは、恒常的に抑制(ノックダウン)することによって検討するとともに、2.hGHと酵素X間の相互作用に関与する構造の詳細な解析を行った。1については、内在性酵素Xの発現をsiRNAを用いて一過性に抑制したところ、hGHの分泌が顕著に低下した。一方、酵素Xを恒常的に抑制した場合には、hGH分泌に対する顕著な効果は観察されなかった。これらの結果より、恒常的に酵素X発現を抑制した場合、何らかのhGH分泌補償経路が発動している可能性が考えられる。しかし、酵素Xの一過性、及び、恒常的抑制の結果を厳密に比較することは困難であり、決定的な結論を得るには、より厳格な実験系の構築が必要である。さらに、本実験の過程で、 低濃度血清存在下におけるhGH分泌が、単に「構成的分泌経路」によるものではないことを見出した。2の相互作用解析については、前年度までに同定した「hGHとの相互作用に必要・十分な酵素Xの約90アミノ酸領域」内に、酵素Xと他のホルモンとの相互作用に必須な部位が含まれていることから、酵素XとhGHの相互作用が、既に良く解析されている他のホルモンとの相互作用に類似したものであることが示唆された。そこで、酵素Xのアミノ酸置換派生体等を用いたより詳細な相互作用の解析を行なったところ、hGHは、他のホルモンとは異なった、ユニークな相互作用表面を通じて酵素Xと相互作用することが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度の実験より、hGH分泌における酵素Xの役割に関して、一部予想外の結果を得たことにより、発現抑制実験のより詳細な検討に加え、一過的発現抑制時と恒常的発現抑制時の比較実験等、当初想定していた以上の検討が必要になった。また、相互作用領域のマッピングに関しては、hGHと酵素Xとの相互作用は他のホルモンとは異なる領域を使用している可能性が示唆された。この結果自体は興味深いものの、相互作用領域を、他のホルモンの例に倣うことなく独自に詳細にマッピングする必要性が生じており、当初予定していた以上の解析が必要な状況である。
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今後の研究の推進方策 |
酵素XのhGH分泌への関与の検証に関しては、酵素Xの発現抑制実験(ノックダウン)を数多く行い一定の結論を得ている。しかし、決定的な検証には、ノックアウトも用いたより厳格な実験系が必要であり、CRISPRを利用した「条件依存性ノックアウト系」等を用いて、酵素Xの関与についての最終的な結論を得たい。また、酵素XとhGHの相互作用表面のマッピングについては、相互作用をより効率的に阻害するペプチドのデザインが可能になるように、酵素Xの部分欠損体や、点突然変異体に加え、hGHのアイソフォーム等も用いたより詳細な定量的解析を行った後に、ペプチドによるhGHと酵素Xの相互作用阻害実験、hGHの分泌抑制実験へと移行する計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度に、酵素Xの発現抑制がhGH分泌に及ぼす効果を明らかにした上で、論文を作成する予定であったが、解析の結果、発現抑制の方法に依存してhGH分泌への効果が異なっており、補償的hGH分泌の存在が示唆された。この新たな知見は論文の根幹に関わる重要性を持つので、酵素X発現の抑制を更に複数の方法で行うことにした。従ってこの確認実験と論文作成に関わる費用からなる未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
主に、論文作成のための英文校正、論文投稿費用に充当する予定であるが、一部、CRISPRを用いた系の確立・解析や相互作用解析等に使用する各種試薬類の補充にも使用する。
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