機能性下垂体腫瘍、中でも成長ホルモン(GH)や副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)産生下垂体腫瘍に対する治療法は、ホルモン産生を抑制することが主眼とされている。本研究は、我々独自の酵母Two Hybrid法により見出したヒト成長ホルモン(hGH)と酵素タンパク質”X”(以下酵素 Xと称する)間の相互作用に焦点をあて、相互作用表面の詳細な解析と、さらにその結果に基づいた「相互作用抑制ペプチド」を創出することによって、機能性下垂体腫瘍、特に成長ホルモン産生腫瘍の新たな分子標的治療への創薬シーズを確立することを目標とした。平成26年度までに、1.hGHと酵素 Xの直接的相互作用の有無、2.蛍光タンパク融合型hGH、酵素XのAtT-20細胞における局在、3.hGH安定的に発現可能な細胞株の樹立、同細胞株を用いた酵素Xの一過性、恒常的発現抑制条件下におけるhGHの細胞外分泌への影響の検討、4.酵素XがhGHとの相互作用に必要な領域の絞込み、5.アミノ酸置換によるhGHと酵素X間の相互作用に必須のアミノ酸残基の特定等を中心に研究を進めてきた。平成27年度では、上記3に示す酵素XのAtT-20細胞における発現抑制用法の相違によるhGH分泌への影響を詳細に解析すべく、CRISPRを用いた酵素Xのノックアウトに基づく実験系の確立を目指した。また、上記4、5に関しては、酵素XとhGH間の特異的相互作用表面を標的とする創薬への展開を念頭に、酵素Xとの直接的相互作用が従来示唆されてきたホルモン前駆体POMCの大量発現精製系を確立し、hGHの場合と同様の、精製タンパクによる相互作用解析系を新たに確立した。このin vitro相互作用解析系を用い、hGH、及び、POMCと酵素X間の相互作用の詳細な比較検討を行い、hGH に特異的な、酵素Xの相互作用表面の特定を進めた。
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