研究実績の概要 |
1. 腱板停止部に関する研究 腱板停止部を安定化させる機構として烏口上腕靱帯(CHL)という構造があるが、過去には棘上筋とその深層にある関節包と連続しているという報告があったが、今回はその構造が前方の肩甲下筋腱にまで及び同じくその安定化に関与していることを見出した。肩甲下筋腱停止部(舌部), 上関節上腕靱帯,CHLが一体となって腱板疎部構造を安定していることを明らかにした。またCHLが烏口突起の下面より嚢胞状の形態をなしその隔壁をになっていることを明らかにした。おもには腱板断裂治療における病態の理解や解剖学的修復をめざす術式開発に大きく寄与するものである。今後は今回局所的に解析した関節包を対象に俯瞰的に観察する手法を用いて、その局在性、つまり厚いところと薄いところが偏在することを明らかにして、薄いところと病因、厚いところと安定化機構との関連性を見出す研究を開始する予定である。 2 短橈側手根伸筋起始部に関する研究 短橈側手根伸筋の深層に位置する関節包が、回外筋・輪状靱帯からなる複合体を形成していることを前年度に明らかにした。その機能的意義を解明するためにその付着構造に関する肉眼解剖学的解析を行った。関節包・回外筋・輪状靱帯の複合体は尺骨鉤状突起の橈側より、尺骨橈骨切痕背側部、上腕骨外側上顆遠位端の3点に幅広く付着することにより腕橈関節の安定性に寄与していることを想定している。肩腱板と同じく、関節包複合体の局在性に着目して研究を継続する予定である。
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