骨肉腫は造血系腫瘍を除いた原発性骨悪性腫瘍の中では最も頻度が高く、また遠隔転移をきたしやすく予後不良である。手術療法の進歩、系統的化学療法の導入により60%以上の生存率となっているが、さらなる改善を目指し骨肉腫のための新規抗癌剤の研究が重要である。 本研究において、我々はmTORの骨肉腫における働きを研究し、新規分子標的製剤としての可能性を探る点で大きな意義があると考えている。 平成24年度は骨肉腫細胞を使用しIn vitroの実験を施行した。マウスの骨肉腫細胞株を2種、ヒト骨肉腫細胞株を4種準備し、それぞれにmTOR阻害薬(Rapamycin)を濃度、時間を変化させ作用をみた。WST assayにて増殖抑制を評価し、結果としては濃度、時間依存的にRapamycinによる細胞増殖抑制を確認した。次にannexin Vと7AADを用いたFACSにてアポトーシス、ネクローシスの評価を行った。結果としては濃度依存的にアポトーシスする細胞の割合は増加していた。 平成25年度はまず、in vitroでの実験で、Rapamycin とGemcitabinの併用効果について検討した。併用することによって、それぞれの単独投与に比較して有意に細胞増殖を抑制した。またこの効果は濃度依存的、時間依存的であった。次に、マウスの骨肉腫肺転移モデルを使用しIn vivoの実験を施行した。細胞は高率に肺転移を起こすマウス骨肉腫細胞株LM8をC3Hマウスに皮下移植した。投与薬剤はRapamycin とGemcitabinを使用した。腫瘍増殖および転移の抑制効果を検討した。結果は、それぞれの薬剤の単独投与よりも併用投与によって腫瘍移植部位の腫瘤の大きさが有意に抑制され、全生存期間の延長もみた。また、肺転移の結節数も単独投与より併用時の方が有意に減少していた。
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