研究課題/領域番号 |
24791533
|
研究種目 |
若手研究(B)
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
浦川 浩 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任助教 (60584753)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | 骨軟部肉腫 / 細胞外マトリックス / ヒアルロン酸 |
研究概要 |
本研究の目的である骨軟部肉腫の細胞外マトリックス・細胞膜上受容体・細胞内シグナル伝達のネットワーク抑制の作用を明らかにするために、骨由来の肉腫であるラット軟骨肉腫細胞セルラインおよび軟部由来の肉腫であるヒトのMPNSTのセルラインを用いた実験を行った。ヒアルロン酸合成阻害薬の4-Methylumbelliferone(MU)はそれぞれのセルラインのマトリックス形成、細胞増殖を抑え、浸潤能なども抑制した。これらの結果はヒアルロン酸合成阻害によるマトリックス抑制自体に抗腫瘍効果があることを示している。また、一方、In vitroとマウス肺癌骨転移のin vivoモデルを用い、放射線による腫瘍細胞の細胞周期障害からの回復を、MUがヒアルロン酸合成を抑制することにより、骨転移モデルの腫瘍成長を抑制することを明らかにした(Futamura, Urakawa et al, 2013アメリカ整形外科学会)。 これらの成果は、MUなどによるマトリクス阻害が、放射線、抗がん剤、分子標的薬などの増感薬となる可能性を示唆するものであり、今後、分子標的薬を使用した実験を行う予定である。特に分子標的薬の至適濃度設定に焦点をあて、マウス・ラットによる動物実験を進める。分子標的薬使用による細胞内シグナルの変化における細胞外マトリックスの影響の解明についても同時にin vitroで実験を行う。具体的には分子標的薬に骨軟部肉腫の細胞外マトリックス・細胞膜上受容体・細胞内シグナル伝達のネットワークに影響する薬物(4-MU、ヒアルロン酸オリゴ糖など)を加えた場合の細胞内のシグナル変化についてmRNAや蛋白レベルでの解析を行う。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
骨軟部肉腫の細胞外マトリックス・細胞膜上受容体・細胞内シグナル伝達のネットワークを明らかにするために、ラット軟骨肉腫やヒトの軟部肉腫のセルラインを用いた実験を行っている。Vitroの実験においてヒアルロン酸合成阻害薬の4-MUはラット軟骨肉腫株の腫瘍増殖を抑え、運動能、浸潤能を抑制した。同様の実験結果がMPNSTの細胞株でもみられた。本実験の結果について今後、学会および論文で発表を行うための準備を行っている。In vitroとマウス肺癌骨転移のin vivoモデルを用い、放射線による腫瘍細胞の細胞周期障害からの回復を、MUがヒアルロン酸合成を抑制することにより、骨転移モデルの腫瘍成長を抑制することを明らかにした(Futamura, Urakawa et al, 2013アメリカ整形外科学会)。
|
今後の研究の推進方策 |
1.細胞外マトリックス・細胞膜上受容体・細胞内シグナル伝達ネットワークと分子標的薬の投与との関係の解明 これまでの、基礎実験の結果を踏まえて、骨軟部肉腫の細胞外マトリックス・細胞膜上受容体・細胞内シグナル伝達をターゲットとした抗がん剤感受性の新規増感法を確立するために、分子標的薬を使用した実験を行う予定である。特に分子標的薬の至適濃度設定に焦点をあて、マウス・ラットに使用する濃度とヒトに使用する濃度で整合性がとれるよう実験を進める。 2.分子標的薬使用による細胞内シグナルの変化における細胞外マトリックスの影響の解明 骨軟部肉腫の細胞外マトリックス・細胞膜上受容体・細胞内シグナル伝達のネットワークに影響する薬物(4-MU、ヒアルロン酸オリゴ糖など)による、分子標的薬による細胞内のシグナル変化への役割を解明するためにvitroでの実験を行う。細胞内のシグナル変化をmRNAや蛋白レベルでの解析を行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
1.マウスまたはラットの腫瘍移植モデルを作成し、細胞外マトリックス・細胞膜上受容体・細胞内シグナル伝達のネットワークに影響する薬物(4-MU、ヒアルロン酸オリゴ糖など)により分子標的薬により増感作用が見られるかを解析するため、実験動物、飼育材料の購入費用、薬剤の費用、免疫染色の抗体等購入費用に研究費を使用する。 2.Vitroでの分子標的薬の細胞内シグナル変化をmRNAレベルで解析するためプライマーおよびreal time PCRの試薬およびWestern blotのための抗体および試薬に対して研究費を使用する。 3.研究結果の発表に関連する学会および論文校正費用、また研究に関連する書籍購入費用に研究費を使用する。
|