研究実績の概要 |
骨軟部肉腫の細胞外マトリックス・細胞膜上受容体・細胞内シグナル伝達のネットワーク抑制の作用を明らかにするために、骨由来の肉腫であるラット軟骨肉腫細胞セルラインおよび軟部由来の肉腫であるヒトの悪性末梢神経鞘腫瘍(MPNST)のセルラインを用いた実験を行った(浜田、浦川ら、軟骨代謝学会2015)(Ikuta, Urakawa et al, 9th International Conference on Hyaluronan)。ヒアルロン酸合成阻害薬の4-Methylumbelliferone(MU)はそれぞれのセルラインのマトリックス形成、細胞増殖を抑え、浸潤能も抑制した。これらの結果はヒアルロン酸合成阻害によるマトリックス抑制自体に抗腫瘍効果があることを示した。また、一方、In vitroとマウス肺癌骨転移のin vivoモデルを用い、MUがヒアルロン酸合成を抑制することにより、in vitroや骨転移モデルにおいてゾレドロン酸の腫瘍成長抑制を補助すること明らかにした(Futamura, Urakawa et al, Clin Exp Metastasis 2013)。これらの成果は、MUなどによるマトリクス阻害が、放射線、抗がん剤、分子標的薬などの増感薬となる可能性を示唆した。一方MPNSTにおけるヒアルロン酸発現をみるために神経線維腫と比較を行ったところMPNSTでヒアルロン酸発現が高く、ヒアルロン酸発現がMPNST患者の予後と相関した(Ikuta, Urakawa et al, Clin Exp Metastasis 2015)。これらの結果はMPNST患者においてヒアルロン酸をターゲットとした治療が予後を改善する可能性を示唆する。
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