健常ラットnormal group としてのN群、神経障害性疼痛 modelとして、SNL を行ったS群、SNLと膝関節屈曲位内固定を併施した、S+I群の3群を作成した。 病理組織学的評価、ELISAによる炎症性サイトカインの発現量測定を行った。マッソントリクローム染色を行ったラット大腿部の病理標本で画像解析を行い、筋組織と線維組織の面積を測定した。S+I群で、線維組織面積は有意に増加していた。これらの結果から、不動化が関節拘縮の発生要因であり、筋性拘縮の原因は筋線維間や、筋膜組織の線維化が招く筋の弾性低下であると考えられた。 次に、免疫染色でNGF発現の局在を確認した。 膝関節周囲組織においてN群では、NGF発現が確認できる筋組織はほとんど存在しなかったがS群では皮下に近い部位、骨に近い部位や筋萎縮のある部位でNGF発現を認めた。S+I群でも同様に発現を認めたが、全体的に発現が強い印象で、また、大腿部に強い発現がみられる傾向にあった。ELISAではNGFにおいては、N群、S群、S+I群の順に発現量の増加を認めた。特筆すべき点として、L5神経根の支配領域外である、大腿四頭筋でも発現量の増加を認めた。NGFのほか、pro-inflammatory cytokineの調査も行った。TNF-αにおいても同様に、発現量の増加を認めたが、健側での上昇は認めなかった。組織形態学評価において、組織の線維化が進んでいたことから、TGF-β1の発現量も調査した。これも、他のサイトカインと同様の発現量増加を認めた。 最後にNGFの影響を確認するために、中和抗体を使用後疼痛閾値の評価を行った。中和抗体を投与すると、投与後1週間程度は、疼痛が軽減することが判明した。mRNA測定においても、中和抗体を用いると、NGFの発現量が低下していた。
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