Hsp47は、コラーゲン線維形成に重要な役割を担う分子シャペロンである。本研究では、組織特異的にHsp47を欠失させることにより、腱・靭帯の形成過程におけるコラーゲン線維の役割を検討した。腱・靭帯特異的にHsp47を欠失するConditonal knockout (CKO) マウスを作製するため、Scleraxis (Scx)の発現制御領域下でCre recombinase (Cre)を発現するトランスジェニックマウス(ScxCre Tg)またはノックインマウス(ScxCre KI)を使用した。 ScxCre TgとHsp47-loxPマウスの交配により得られたCKOマウス胚では、マッソン・トリクローム染色により検出される腱・靭帯のコラーゲン線維が著しく減少していた。また、電子顕微鏡での解析の結果、このCKOマウスの腱組織では、細胞外に形成されるコラーゲンfibrilの著しい減少だけでなく、粗面小胞体の変化も検出された。さらに腱原基から未成熟な腱組織が形成される過程を詳細に解析した結果、Hsp47の欠失により、一部の腱細胞でアポトーシスが誘導されていることが明らかとなった。CKOマウスの腱・靭帯細胞においては、骨芽細胞及び軟骨細胞の分化マーカー分子の異所性発現は検出されなかった。一方、ScxCre KIとHsp47-loxPマウスの交配により得られたCKOマウスにおいては、腱・靭帯におけるコラーゲン線維形成の部分的な抑制が認められた。 骨、筋肉、及び腱・靭帯の組織間の連結は、本研究で作製したいずれのCKOマウスにおいても維持されていた。従って、連結された運動器としての組織構築には、各原基の移行部の細胞により維持される連続性が極めて重要な役割を果たしていることが示唆された。
|