研究課題/領域番号 |
24791545
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
美舩 泰 神戸大学, 医学部附属病院, 特命助教 (80608464)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 肩腱板断裂 / 糖化最終生成物 / 加齢 |
研究概要 |
本研究の目的は、非外傷性に起こる高齢者の肩腱板断裂と糖化ストレスの関係性を究明し、糖化ストレスにより産生される糖化最終生成物(advanced glycation end products; AGEs)を抑制することにより、加齢によると考えられる非外傷性の肩腱板断裂に対する予防的治療開発の可能性を探ることである。 1.ヒト肩腱板組織(断裂腱板)を用いたAGEsと年齢・脂肪変性の検討 腱板修復手術時にトリミング操作により切除・破棄される腱板の断端組織を採取し、免疫組織染色により腱板組織へのAGEs沈着量・AGEs受容体(RAGE)発現量を計測すると同時にOil red O染色により脂肪変性に関しても同様に調査を行っている。 現在のところ、サンプル数は11症例集まったが、患者年齢層が50-70台に固まっていることもあり、現在のサンプル数ではAGEs、RAGEに関して加齢との相関は確認できていないが、脂肪変性に関しては、脂肪変性分類であるGoutallier分類との相関が得られたので、H24年の日本整形外科学会基礎学術集会では発表を行った。 2.ラット肩腱板組織(非断裂腱板)を用いたAGEsと年齢・脂肪変性・機能的強度の検討 肩腱板断裂の実験モデルとして汎用されているラットを用いて、各年齢群(3、6、12、24M)のSDラットを各郡15匹用意し、肩腱板組織として棘上筋・棘下筋・肩甲下筋の3つの筋を採取し実験を行う計画だが、現在まだ6Mまでのサンプルであり、本年5月には12Mの組織を採取予定である。12Mの組織が採取された時点で組織学的免疫染色により腱板組織へのAGEs沈着量・RAGE発現量を計測するし、同時にOil red O染色により脂肪変性に関しても調査を行う。さらに引っ張り試験により最大破断強度と弾性率を計測し、組織AGEs沈着量、RAGE発現量との相関に関しても検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.ヒト肩腱板組織(断裂腱板)を用いたAGEsと年齢・脂肪変性の検討 2年間の実験期間中のヒト腱板組織の目標サンプル数は30であったが、現在サンプル数は11である。これは当初の計画かた考えるとやや少ないとも取れるが、現在すでに今後の手術予定も数多く入っており、本年中に25サンプルは確実であると考えており、充分量のサンプルは集められると考えている。今後も引き続き、免疫組織染色により腱板組織へのAGEs沈着量・AGEs受容体(RAGE)発現量を計測し、Oil red O染色により脂肪変性に関しても同様に調査し、その相関関係を調査していく。脂肪変性に関しては、脂肪変性分類であるGoutallier分類との相関が得られたので、H24年の日本整形外科学会基礎学術集会では発表を行うこともできた。 2.ラット肩腱板組織(非断裂腱板)を用いたAGEsと年齢・脂肪変性・機能的強度の検討 現在のところ、予定通りにサンプルが集まっており、本年度に12Mのサンプルが集まった時点で組織学的免疫染色により腱板組織へのAGEs沈着量・RAGE発現量を計測するし、同時にOil red O染色により脂肪変性に関しても調査を行う。さらに引っ張り試験により最大破断強度と弾性率を計測し、組織AGEs沈着量、RAGE発現量との相関に関しても検討する予定である。 全体として、ほぼ計画通りに進行しており、まだ結果の出ていない部分も多いが、現段階ではまだサンプル収取時期であり、結果は本年度に出てくることは確信している。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度からの実験に関しては、現状の計画通りに進めれば問題はないと考えている。これまでに採取したサンプルと、本年5月中に採取可能となるサンプルを合わせて一斉に組織学的、力学的に評価を行い、データをまとめる。 当初より本年度の計画として位置づけていた、高血糖・低血糖ラットモデルによる実験では、これに関してはAGEs沈着と腱板脆弱性の関係性をより明らかにするために、AGEs発現を増加もしくは低下させることで腱板脆弱化の促進もしくは防止につながるか否かを検討する実験を考えている。糖尿病ラットにおいてAGEs沈着が増加することは既に報告されているので、SDラットにストレプトゾトシン30mg/kgを単回投与して糖尿病ラットモデルを作成し、1か月後において肩腱板組織へのAGEs沈着増加を確認する。一方、AGEsやRAGEを抑制する成分・薬剤などは発見されていないので、12か月齢もしくは24か月齢のSDラットにインスリンを3日おきに5週間投与し、反復性低血糖ラットモデルを作成し、まずこのモデルにおいて腱板組織のAGEs沈着量、RAGE発現量が減少していることを確認する。糖尿病モデルおよび反復性低血糖モデルから腱板組織を上腕骨への付着部を含めて採取して引っ張り試験を行い、同年齢の通常ラット腱板組織との腱板強度を比較する。 本研究に関しても、モデル作成に約2か月を要し、その後ただちにサンプルを採取し、他の実験と同様の評価を行うので、研究推進に関して特に問題はないと考える。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度も引き続きラットを用いた動物実験を行うため、実験動物購入および動物飼育のために資金を要する。また高血糖・低血糖ラットモデル作成のためにストレプトゾトシンならびにインスリンの購入が必要である。評価に関しては、これまで通り各免疫染色用抗体やELISAキット、実験に関する消耗品などの資金が必要である。また、データ解析に関するソフト購入も予定している。 本年度は実験成果採取の年であり、すでに本実験の一部データを本年度の日本整形外科学会での発表は決まっており、今後も日本肩関節学会やAnnual meeting of American Academy of Orthopaedic Surgeons(AAOS)への投稿準備も進めており、国内外学会への成果発表旅費や論文発表後の印刷費なども計上している。
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