本研究の目的は、非外傷性に起こる高齢者の肩腱板断裂と糖化ストレスの関係性を究明し、糖化ストレスにより産生されるを糖化最終生成物(advanced glycation end products; AGEs)を抑制することにより、加齢によると考えられる非外傷性の肩腱板断裂に対する予防的治療開発の可能性を探ることである。 まず腱板修復手術時にトリミング操作により切除・破棄される腱板組織を採取し、免疫染色により腱板組織へのAGE沈着を確認した。症例数は当初の予定より若干少なく25例であったが、各症例においてAGE沈着を確認し、脂肪変性との関連に関しても、現在もなお検討続けている。現在までのデータは日本整形外科学会学術総会および日本肩関節学会にて発表を行い、現在邦文雑誌へ投稿中である。 次に健常組織での加齢性変化を検討するために、ラットを各年齢(3M、6M、12M、24M)において腱板組織のAGEs沈着量を計測し、同時に組織学的検討により腱板組織の脂肪変性および引っ張り試験による最大破断強度と弾性率を計測した。引っ張り試験において3Mと6Mでは有意差は認めなかったが、12Mでは先の2群に比べて有意に強度の低下を認めた。24Mについては1か月後に採取予定としている。 最後に、AGEs発現増強/抑制試験として糖尿病ラットおよび長期低血糖ラットモデルを用い、腱板組織におけるAGEs沈着量の計測と引っ張り試験による腱板強度を、同年齢の通常ラット腱板組織と比較検討を行った。糖尿病ラットにおいてより多くのAGE沈着を認め、引っ張り強度に関しても有意な低下を確認できた。低血糖モデルではいずれの実験においてもコントロール群との有意差は認めなかった。これらのデータに関しては現在データ解析および論文作成中である。
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