研究課題/領域番号 |
24791546
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
古松 毅之 岡山大学, 大学病院, 助教 (20432651)
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キーワード | 半月板 / 軟骨細胞様形質 / 半月板修復 |
研究概要 |
半月板inner領域損傷が、outer領域損傷に比較し治療成績が不良である原因として、inner領域は非血行領域であり、軟骨組織に類似した細胞外器質(ECM)が関与していると考えられる。今年度は、軟骨組織特異的に発現するとされるSOX9・CCN2・II型コラーゲンの局在とその役割について検討した。また、細胞骨格を制御するsmall GTPase ROCKの関与を検討した。 半月板inner細胞にROCK阻害剤(ROCKi)を添加し培養することで、SOX9・COL2A1の発現が上昇した。また、ROCKiの添加により、半月板inner細胞におけるSOX9・Smad2/3の核内への集積が増加していた。Western blotによる解析で、ROCKi添加により核内に存在するSOX9は1.3倍、 Smad2/3は4.8倍に増加していた。 本研究により、ROCK阻害は半月板inner細胞におけるSOX9・Smad2/3の核内移行を促進し、COL2A1の発現を増強することが明らかとなった。これらの結果から、ROCK阻害はSOX9-Smad2/3転写複合体の形成を誘導することで、半月板inner細胞の軟骨細胞様形質を維持している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ROCK阻害により細胞形態を変化させると、SOX9-Smad2/3転写複合体の形成を誘導することで、半月板inner細胞の軟骨細胞様形質が賦活化される可能性が示唆された。 つまり、inner領域損傷は軟骨損傷に対する治療と同様、inner細胞の軟骨細胞様形質を生理的メカニカルストレスやROCK阻害により活性化させる必要があると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
半月板inner領域に特徴的なECM構造を再構築することが、非血行領域における半月板修復促進と半月板再生の鍵になるものと推測される。 半月板inner細胞を生体吸収性ペプチドゲルに包埋し、3次元培養する(2週間)。ROCK阻害と伸張刺激負荷(4時間/日)により、II型コラーゲンをはじめとするECM構成成分の産生が増強するものと予想される。伸張刺激後のSOX9・ECM構成成分の発現変化を、real-time PCR・Western blot・免疫染色により解析する。 半月板にパンチ孔を作製し、器官培養後の修復状態を、それぞれの条件で検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度の研究計画が順調に進行したため、消耗品における研究費の使用量が見積もりよりも少なかった。 そのため残額を平成26年度に繰り越すが、抗体等の消耗品購入費に割り当てたい。その他、培養細胞・PCR関連試薬として平成26年度の研究費を使用予定である。
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