研究課題/領域番号 |
24791550
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
堀内 秀樹 愛媛大学, 医学部附属病院, 助教(病院教員) (60598762)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | アデノシン / 痛み / 術後疼痛 / 神経障害性疼痛 |
研究概要 |
アデノシンは抑制性のトランスミッターであり、神経が過敏状態になっている「疼痛」において、それを緩和することが期待される。しかし痛みにはそのメカニズムから様々なものがあり、ある鎮痛候補物がどのような痛みに最も効果的かということについては不明な点が多い。本研究では坐骨神経絞扼及び脊髄損傷による神経障害性疼痛モデルと足底切開による術後疼痛モデルに対するアデノシンの効果を比較し、術後疼痛にアデノシンレセプターがどのように関与できるかを検証する。本年度では術後疼痛、神経障害性疼痛それぞれのモデルを作成し、アデノシンの疼痛に対する効果を検討した。Wistar系雌ラットを用い、術後疼痛モデルとして足底を1cm切開・縫合するモデルを作成した。神経障害性疼痛のモデルとして坐骨神経絞扼モデルと脊髄を第11胸椎レベルで20gの重錘を用いて20分間圧迫するモデルを作成した。アデノシンの効果を検討するためnon selective adenosine receptor agonist であるCl-adenosineを術後24時間後、72時間後に硬膜内投与し、その1時間後に両後肢足底部の熱刺激によるwithdrawal latencyの変動を疼痛閾値として測定した。すべてのモデルでそれぞれ処置後24時間から数日にかけて足底部に有意な知覚過敏が発生した。足底切開モデルでは術後24時間後にCl-adenosineを投与すると有意な疼痛閾値の上昇が認められたが、術後72時間後にCl-adenosineを投与しても有意な変化は認められなかった。坐骨神経絞扼モデル、脊髄圧迫モデルでは術後24時間後、72時間後ともにCl-adenosine投与により有意な疼痛閾値の上昇が認められた。アデノシン硬膜内投与は痛みの種類によりその効果発現時期が異なることが推察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の実験計画としては、1)術後疼痛および神経因性疼痛モデルラットの作成、2)痛みの評価、3)アデノシン関連物質の投与であった。モデルの作成としてはラット足底切開モデル(術後疼痛モデル)、ラット坐骨神経絞扼モデル(神経障害性疼痛モデル)、ラット脊髄損傷モデル(神経障害性疼痛モデル)を作成し、Hargreaves’ Planter Test Apparatus (Ugo Basile) を用いてラット後肢足底部に熱刺激を加え、回避行動をとるまでの時間を温痛覚閾値として測定することで、痛覚過敏を引き起こしていることを確認した。これらのモデルに対し、non selective adenosine receptor agonist であるCl-adenosineを術後24時間後、72時間後に硬膜内投与し、モデル間に効果発現の差があることが確認できた。以上の結果からおおむね実験計画は達成できていると考えられる。今後はこの効果発現の相違の検討を免疫染色による組織学的評価やmRNAの測定などで検討していく予定である
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度に確立した3つのモデルの脊髄内アデノシンレセプターの変化を調べる。使用する組織は、脊髄損傷モデルでは圧迫部(第11胸椎レベル)、足底切開モデルと坐骨神経絞扼モデルでは腰膨大部のL4、L5神経根に一致する部位を用いる。 1) アデノシンA1レセプターの免疫染色 アデノシンA1レセプターの抗体を用いて3つのモデルで脊髄後角のアデノシンA1レセプターの局在と量的変化を測定する。それぞれのモデルで手術の1日目、3日目及び7日目の脊髄のレセプター発現を観察し、アデノシンがどの疼痛モデルのどの時期に一番効果的に働くかを検討する。 2) アデノシンA1レセプターmRNAの測定 Real-time PCR法を用いて3つのモデルのそれぞれの時期にアデノシンA1レセプターがどの様に変化するかを観察する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度としては研究の継続のため実験用ラットを追加購入したいと考えている。また免疫染色用の抗体などの染色用試薬や、mRNAの測定のための実験試薬の購入も計画している。
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