研究課題/領域番号 |
24791552
|
研究種目 |
若手研究(B)
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
小山田 亜希子(堀亜希子) 九州大学, 生体防御医学研究所, 特任助教 (30589461)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 関節リウマチ / C型レクチン / Mincle |
研究概要 |
本研究では、関節リウマチ(rheumatoid arthritis; RA) 病態における自然免疫の役割に注目し、RA滑膜炎や骨破壊をもたらす滑膜マクロファージや破骨細胞における C 型レクチンの役割を解析することによって、病因解明や新規治療の確立を目指すものである。 最初に、C型レクチンの中でもmacrophage inducible C-type lectin(Mincle)に着目して研究を行った。 健常人の末梢血を用いて、Mincleの発現を調べた。末梢血からリンパ球を単離し、LPS(0-100μg/ML)にて刺激を行い、マウス抗ヒトMincle抗体を用いて、CD14と同時に細胞表面染色を行い、フローサイトメーターにて解析を行った。CD14陽性の単球系細胞では、LPSの濃度依存的にMincleの発現上昇がみられた。しかし一方で、ヒトの単球系細胞株であるU937細胞やTHP-1細胞株では、LPS刺激を行ってもMincleの発現は認められなかった。次に、活動性を有するRA患者の末梢血、あるいは手術にて切除された滑膜からリンパ球を単離し、無刺激の状態で同様に解析を行った。しかし、残念ながら、刺激を行わない条件では、CD14陽性、あるいはCD14陰性細胞ともに、Mincleの発現は見られなかった。 マウスのコラーゲン誘導性関節炎(Collagen-induced arthritis; CIA)におけるMincleの重要性についても検討を行うために、まずはC57BL/6背景の野生型(WT)マウスを用い、CIAの誘導の再現性を確認した。トリII型コラーゲンと結核死菌を含む完全フロイントアジュバントのemulsionを作成し、0日と21日の2回、皮下注射し免疫を行った。10-14週齢のオスWTマウスではほぼ毎回、80%以上でCIAの発症することが確認できた
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
健常人の末梢血由来のリンパ球にLPSの刺激を行うことでCD14陽性単球系細胞にMincleの発現が誘導されることが確認できた。LPS以外の刺激によってMincleが誘導されてくるかどうかはまだ確認していないが、少なくとも、何らかの炎症が生じている状況ではヒトでもMincleが誘導されることが示唆される。一方で、RA患者から採取したリンパ球では末梢血由来、あるいは炎症局所である滑膜由来いずれにおいても、定常状態ではMincleが発現していないことが確認された。このことは、RA病態にMincleが関係していない可能性が考えられるが、しかし、RAの発症前、あるいは発症早期に一時的に発現誘導されて、発症後には発現が下がっているか、という可能性があり、この点に関してはまだ検討の余地が残っている。 また、マウスのCIAモデルを用いてMincleの関節炎発症における重要性を解明するにあたり、CIAが十分に再現性をもって誘導されることを確認した。Mincle遺伝子欠損マウス、あるいは、今後行う予定である、他のC型レクチンであるMCL (macrophage C-type lectin)遺伝子欠損マウス両者を当研究室に導入もでき、十分なバッククロスと個体数が確保できればCIAの誘導により、それらC型レクチンの関節炎の重要性について、ヒトでは確認できない病態への関わりについて検討可能な状態となっている。
|
今後の研究の推進方策 |
LPS刺激を行った健常人の末梢血リンパ球ではMincle発現が認められたことから、RA患者から得られた検体においてもLPS刺激によって同様かあるいはより高いMincle発現がみられるかどうか、また、LPS以外でMincle発現誘導可能な刺激があり得るかを検討する。 採取可能であれば、RA発症早期患者の検体を、経過が長い患者検体、および健常人との比較を行い、Mincleの病態への関与について検討を深める。 マウスでの検討のためMincle遺伝子欠損マウス、およびMCL遺伝子欠損マウスは既に当研究室に導入済みである。十分なバッククロスと個体数確保ができたのちに、CIAを誘導し、発症率や重症度、および抗コラーゲン抗体レベルやリンパ球のサイトカイン産生能についての検討を行っていく。 MCLについてはこれまでヒトでの検討を行ってこなかったので、これについても、健常人、RA患者からリンパ球を採取し、フローサイトメーターによる発現検討を行う予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
フローサイトメーターによる解析を行うための抗体、培養液、LPS、トリII型コラーゲン、完全フロイントアジュバント、細胞分離用試薬などの試薬、野生型マウス、マウス飼育管理のための床敷きと餌、実験に使用するプレートやチューブ、シリンジといったプラスチック器具の購入に研究費をあてる。 また、情報収集や研修のために関係学会・研究会に参加する出張費にも使用する予定である。
|