研究課題/領域番号 |
24791552
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
小山田 亜希子 (堀 亜希子) 九州大学, 大学病院, 研究員 (30589461)
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キーワード | 関節リウマチ / C型レクチン / Mincle |
研究概要 |
本研究では、関節リウマチ(rheumatoid arthritis; RA) 病態における自然免疫の役割に注目し、RA滑膜炎や骨破壊をもたらす滑膜マクロファージや破骨細胞における C 型レクチンの役割を解析することによって、病因解明や新規治療の確立を目指すものである。 最初に、C型レクチンの中でもmacrophage inducible C-type lectin(Mincle)に着目して研究を行った。 健常人の末梢血を用いて、Mincleの発現を調べた。末梢血からリンパ球を単離し、LPS(0-100μg/ML)にて刺激を行い、マウス抗ヒトMincle抗体を用いて、CD14と同時に細胞表面染色を行い、フローサイトメーターにて解析を行った。CD14陽性の単球系細胞では、LPSの 濃度依存的にMincleの発現上昇がみられた。しかし一方で、ヒトの単球系細胞株であるU937細胞やTHP-1細胞株では、LPS刺激を行ってもMincleの発現は認められなかった。次に、活動性を有するRA患者の末梢血、あるいは手術にて切除された滑膜からリンパ球を単離し、無刺激の状態で同様に解析を行った。しかし、残念ながら、刺激を行わない条件では、CD14陽性、あるいはCD14陰性細胞ともに、Mincleの発現は見られなかった。 マウスのコラーゲン誘導性関節炎(Collagen-induced arthritis; CIA)におけるMincleの重要性についても検討を行うために、まずはC57BL/6背景の野生型(WT)マウスを用い、CIAの誘導の再現性を確認した。トリII型コラーゲンと結核死菌を含む完全フロイントアジュバントのemulsionを作成し、0日と21日の2回、皮下注射し免疫を行った。10-14週齢のオスWTマウスではほぼ毎回、80%以上でCIAの発症することが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
健常人の末梢血由来のリンパ球にLPSの刺激を行うことでCD14陽性単球系細胞にMincleの発現が誘導されることが確認できたが、LPS以外の刺激によってMincleが誘導されてくるかどうかはまだ確認していない。 一方で、RA患者から採取したリンパ球では末梢血由来、あるいは炎症局所である滑膜由来いずれにおいても、定常状態ではMincleが発現していないことが確認された。このことは、RA病態にMincleが関係していない可能性が考えられるが、しかし、RAの発症前、あるいは発症早期に一時的に発現誘導されて、発症後には発現が下がっているか、という可能性があり、この点に関してはまだ検討の余地が残っている。 また、マウスのCIAモデルを用いてMincleの関節炎発症における重要性を解明するにあたり、CIAが十分に再現性をもって誘導されることを確認したが、Mincle遺伝子欠損マウス、あるいは、今後行う予定である、他のC型レクチンであるMCL (macrophage C-type lectin)遺伝子欠損マウス両者の繁殖が(バッククロスを含めて)進まず、それらのマウスでのCIA誘導を試みることができていない。
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今後の研究の推進方策 |
LPS刺激を行った健常人の末梢血リンパ球ではMincle発現が認められたことから、RA患者から得られた検体においてもLPS刺激によって同様かあるいはより高いMincle発現がみられるかどうか、また、LPS以外でMincle発現誘導可能な刺激があり得るかを検討する。 採取可能であれば、RA発症早期患者の検体を、経過が長い患者検体、および健常人との比較を行い、Mincleの病態への関与について検討を深める。 マウスでの検討のためMincle遺伝子欠損マウス、およびMCL遺伝子欠損マウスは既に当研究室に導入済みである。十分なバッククロスと個体数確保ができたのちに、CIAを誘導し、発症率や重症度、および抗コラーゲン抗体レベルやリンパ球のサイトカイン産生能についての検討を行っていく。 MCLについてはこれまでヒトでの検討を行ってこなかったので、これについても、健常人、RA患者からリンパ球を採取し、フローサイトメーターによる発現検討を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
実験に必要な遺伝子改変マウスの繁殖が困難で有り、十分回数のマウス関節炎の研究を遂行することができなかった。 また、関節リウマチ患者サンプルの採取も不十分だったため、これらの実験に用いる試料購入費用が少なかった。 関節リウマチ患者の血液および関節液のサンプルを採取し、C型レクチンの発現を調べる。また、マウスを用いた研究では、遺伝子改変マウスの繁殖を十分に行った上で、野生型マウスとのコラーゲン関節炎誘導を試み、この関節炎モデルにおけるC型レクチンの役割を解明する。これらの研究を遂行する上で必要な試料購入や野生型マウスの購入などにあてる。
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