研究課題
骨内では骨芽細胞と骨髄脂肪組織が共存しており、老人性骨粗鬆症では、加齢とともに骨量が減少し、脂肪組織が増加する。また、脂肪組織の増加を基盤とする肥満やメタボリック症候群が脂肪毒性を介して種々の生活習慣病の発症・病態に関与することが示唆されている。我々は昨年度、骨芽細胞から骨細胞への分化を再現可能な培養系を開発した。その培養系を用いて、脂肪細胞が骨芽細胞の増殖、分化に与える影響について検討した。マウスより採取した皮下/内臓脂肪組織を外皿に、骨芽細胞を内皿に培養し、液性因子が通過可能な条件で混合培養を行った。単独培養を1週間行ったものを骨芽細胞モデル、単独培養を3週間行ったものを骨細胞モデルとした。骨芽細胞モデルでは、単独培養に比し混合培養で骨芽細胞の増殖が抑制された。骨細胞モデルでは増殖に差は見られなかった。アポトーシスの評価では、両モデルとも脂肪組織との混合培養による変化は認めなかった。免疫組織化学による分化マーカーの検討では、Osteocalcinは、骨芽細胞モデル、骨細胞モデルの両方において、脂肪組織との混合培養で発現が低下した。DMP-1、SOSTは、骨芽細胞モデルにおいて、混合培養で発現の低下が見られた。real-time RT-PCRによるmRNAの発現では、骨芽細胞、骨細胞ともにALP、Osteocalcin、DMP-1、PHEX、SOSTのすべてにおいて混合培養で低下傾向が見られた。以上より、1)皮下/内臓脂肪組織は液性因子を介して、骨芽細胞の増殖、分化を抑制した。2)骨細胞は骨芽細胞に比し脂肪組織に対する感受性が低かった。3)皮下脂肪組織と内臓脂肪組織とでは、骨芽細胞・骨細胞の増殖・分化に対する影響に差は認めなかった。今後、上記現象の仲介因子を同定し、骨粗鬆症に対する新規治療法の開発につなげたい。
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Human Pathology
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