研究課題
脊髄損傷(Spinal cord injury: SCI)後疼痛モデルラットを作成し、脊髄損傷レベルとはより下位レベルの脊髄後角でin vivoパッチクランプ法により自発性興奮性シナプス後電流(sEPSC)の解析を行った。成熟Sprague-Dawley系雄性ラット5週齢の時点で不全脊髄損傷モデルを作成した。SCIモデルは均質なモデルを作成するため、機械的圧迫モデルをIH Impactorを用いてTh9レベルで200 kdynで1秒間圧迫することによって作成した。術後1週の時点でvon Frey testにより下肢にallodynia様の反応が出現するのを確認して実験に使用した。Th9の椎弓切除のみをsham群としてコントロールに用いた。腰膨大部レベルで脊髄膠様質ニューロンからin vivoパッチクランプ法によりsEPSCを記録した。SCIモデル群におけるsEPSCの平均頻度は14.3±1.4Hzで、平均振幅は16.0±1.6pAであった(n=30)。一方、Sham群のsEPSCの平均頻度は 9.0±1.0Hzで、平均振幅は 12.3±0.6pAであり(n=30)、両群間において頻度に関して統計学的に有意差を認めた。これらの結果から脊髄損傷後疼痛below level型は損傷部より下位の正常脊髄内において、何らかの興奮性の可塑的変化が生じていると考えられる。このSCIモデルのsEPSCの増強にミクログリアが関与しているか、ミクログリア活性化阻害薬のミノサイクリンを灌流投与することで変化を解析した。SCIモデルにおけるミノサイクリンの灌流投与前後でのsEPSCの変化率は頻度が115.4±22.4%で、平均振幅は107.3±14.8%であった(n=9)。当初の仮説では抑制がかかると予想していたが、仮説に反してこれらの結果は増強傾向であった。
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10.1016/j.neuroscience.2013.05.023