研究課題
平成26年度は昨年度に確立したWistar系ラット線維輪細胞のin vitro実験系を用いて更に研究を行った。特に酸化ストレスが椎間板変性に及ぼす影響を検討した。昨年度は過酸化水素H2O2やBSO(buthionine sulfoximine)で酸化ストレスを与えた結果、MMP-3、COX-2やTNF-αなどの炎症性サイトカインの発現上昇や細胞外基質であるaggrecanの発現減少を認めた。今年度は更に酸化ストレスの下流シグナルを検討し、H2O2添加後、Western blot法でp38、JNK、ERKがリン酸化されることを確認した。更にROS(reactive oxygen species)によるCOX-2の発現上昇は全てのMAPK阻害剤で有意に抑制されたことからMAPKが酸化ストレスの下流シグナルであることも確認した。またROSによる各遺伝子発現の変動は抗酸化剤であるNAC(N-acethylcysteine)添加により有意に抑制された。更にTNF-αを線維輪細胞に添加したところ、有意に細胞内ROSの上昇が認められ、MMP-3発現上昇、aggrecan発現の減少が見られた。これらのmRNA発現変動はNACにより有意に抑制された。更にMAPK等の下流シグナルもNAC添加によって抑制されたことから、ROSと炎症性サイト間の間でpositive feedback loopが形成されており、抗酸化剤であるNACで制御されることが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
当初の予定であった卵巣摘出による閉経モデルラットにおける椎間板変性の検索については、その表現型の弱さから明確な結果を出すことは困難であったが、実験系をin vitroに変更してからは昨年度ある程度は目標を達成できていると考えている。特に酸化ストレスが椎間板変性に及ぼす影響はその下流シグナルまで明らかにすることができたことは大きな進歩であると思われる。更に本実験系でROSの影響をNACでrescueできたことは本研究から得られた知見を臨床に還元する上では非常に有用な情報になりうると考えている。
本年度は昨年得られた結果を検証し、Wistarラットのin vivo 椎間板変性モデルを用いて椎間板変性への酸化ストレスの関与を遺伝子発現、MRI画像、組織所見等で検証する予定である。更にはNACでのrescueがvivoでも可能であるかどうか検証する。尾部圧迫モデルはマウスではその大きさから作出が困難であることから、椎間板変性モデルとしては椎間板の穿刺モデルを利用するよていである。またこれらの知見を国内、海外の学会等で発表する予定である。
一昨年前に研究施設が異動になり、研究環境が変化したことが多少影響していると思われるが、研究自体は概ね順調に進行している。
次年度は最終的な研究結果を更に検証しまとめるにあたり必要なin vivoの実験系に使用予定である。また得られた知見を国内外で発表するとともに新しい知見を学会等に参加して得る予定である。
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