研究課題/領域番号 |
24791563
|
研究種目 |
若手研究(B)
|
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
岩波 明生 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (40327557)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 脳・神経疾患 |
研究概要 |
Glioblastoma(GBM)に対する新たな分子標的治療法を確立するため、PMLに注目し研究を行っている。 本年度は、GBM における腫瘍抑制因子PML のin vitro での機能解析とPML をTarget とした分子標的治療の有効性について検討した。 1. GBM 細胞株(U87細胞)に対し、PML を過剰発現させてPML 高発現下でのGBM細胞の機能解析を行った。PML高発現GBM細胞は、対照に比し有意に細胞増殖能が低下する一方で、Rapamycin, pp242, Erlotinibなどの抗腫瘍薬剤に対する抵抗性を認めた。 2. GBM細胞株において、PML targeting の効果を in vitro で確認する。U87細胞に対して亜ヒ酸(As2O3) を投与し、培養後細胞を回収しそのlysateをWestern blottingしたところ、細胞内のPMLはdegradationされていることが分かった。一方U87細胞に対しPML をsiRNAでノックダウンしてからRapamycin, pp242, Erlotinib などの薬剤投与すると、対照群に比し有意に薬剤感受性が増大することが分かった。そこで次に、PML targetingの有効性を確認するため、U87細胞に対して、As2O3を投与する群、pp242を投与する群、As2O3+pp242併用群の3群に分けて薬剤投与を行い、薬剤に対する腫瘍増殖能、アポトーシス細胞数をWST-1 assayやTUNEL染色で比較検討した。すると、併用群で有意に他の2群に比し細胞増殖能は減少すると共にアポトーシス細胞数は増大した。 以上より、GBMにおいてPML targeting はRapamycin, pp242などの抗腫瘍薬剤に対する感受性を増大させると考えている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今回の成果を踏まえて、次に我々は同様の実験をin vivoで行った。 U87細胞をNudeマウスの皮下に注入し、定量的な皮下腫瘍モデルを作成した。腫瘍が生着し、安定して増殖しはじめた10日後より、As2O3を投与する群、pp242を投与する群、As2O3+pp242併用群の3群に分けて薬剤投与を行い、薬剤の効果を腫瘍の大きさを比較することにより、また腫瘍を取り出して固定後組織薄切標本を作成し、免疫組織学的解析(PML, Ki-67, p-S6, TUNEL染色など)を行うことでで比較検討した。するとin vitroでの結果と同様に、併用群で有意に他の2群に比し腫瘍は減少すると共にアポトーシス細胞数は増大した。 これらの結果を統合し、PNASに投稿した結果2013年2月に受理された。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、本成果をさらに詳細に詰めたいと考えている。すなわち、PMLによる腫瘍抵抗性のメカニズムをさらに詳細に検討する。申請時に計画したGBM患者由来腫瘍幹細胞分画の分離・解析とこれらにおけるPMLの機能を解析する予定である。1. Glioblastoma 患者由来の細胞をneurosphere 培地で培養し、CD133, CD15 などいわゆる腫瘍幹細胞の選択的マーカー陽性の細胞をFACS でsorting する。これらの細胞に対しneurosphere formation assay およびin vitro differentiation assay を行い、その自己複製能と多分化能につきヒト神経幹細胞と比較検討する(腫瘍幹細胞分画の幹細胞character の確認)。 2. この腫瘍幹細胞分画に対して1) PML 発現を免疫組織学的に評価する(蛍光2重染色)。 特にnestin やMusashi1 など幹細胞マーカーと2重染色を行い幹細胞様性質を持つ細胞のP発現が高いかどうかを確かめる。2) 細胞増殖能およびTemozolomide やRapamycin, Erlotinib,As2O3 などの薬 剤に対する感受性を同様にWST-1 assay やTUNEL 染色などで評価し、ヒト神経幹細胞での結果と比較検討する。 腫瘍幹細胞分画の薬剤抵抗性の有無をin vitro で検討する。 さらに、本研究に加えて余裕があれば、PMLの腫瘍抵抗性のメカニズムの解析として、あらたに細胞内の代謝経路の解析をメタボローム解析を行うことにより検討する予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
未使用額の発生は分子生物学試薬、細胞培養関連試薬などが一部共同研究などにより効率的に調達されたためである。また、一部の細胞を用いた研究は平成25年以降に変更した結果、見かけ上平成24年度が少なくなったが、こちらは平成25年度以降に使用されるため、繰り越しを希望させて頂いた。 よって本年度は前年度を上回る研究費の使用が予想される。すなわち、Glioblastoma患者由来細胞の培養に関する費用、Facs sorting用の抗体費、免疫組織学的解析用の抗体費、各種抗腫瘍薬剤・アッセイ薬剤費に加え、本年度はメタボローム解析費を計画している。
|