研究課題/領域番号 |
24791565
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研究機関 | 日本獣医生命科学大学 |
研究代表者 |
越智 広樹 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 助教 (30582283)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 骨代謝 / miRNA / 骨芽細胞 / 骨細胞 |
研究概要 |
骨粗鬆症は、人間のかかる疾患のうち、もっとも頻度が高く、今後社会の高齢化に伴い、さらに増加が見込まれているが、骨粗鬆症の発症機序については未だ不明な点が多い。また、現在広く使用されている骨粗鬆症に対する治療薬の多くは破骨細胞を標的としており、適切に骨形成を促進する薬剤の開発が急務である。近年の分子生物学の発展により、骨量を調節する骨リモデリングの分子レベルでの理解が進んだが、骨芽細胞から骨細胞への分化調節機構、骨細胞の生理的な機能に関しては不明な点が多く、その全容解明には新しい視点からのアプローチが必要であると考えられる。そこで本研究ではmiRNAに着目し、骨代謝におけるmiRNAの役割を解明することを目的とする。本年度は、これまでに骨芽細胞分化の前後で発現が増加するmiRNAの骨芽細胞分化に関する影響を検討した。骨芽細胞様細胞株MC3T3-L1細胞を用いて、本miRNAを過剰発現およびノックダウンをしALP活性を測定したところ、本miRNAは骨芽細胞分化を促進することが確認された。さらにin silicoで本miRNAの標的遺伝子を数種類同定した。これらの標的遺伝子はmiRNAの過剰発現によりタンパクレベルで発現が抑制されることが確認され、また、これらの標的遺伝子を過剰発現するウイルスを作成しMC3T3-L1細胞に感染させ、骨芽細胞分化を検討したところ、骨芽細胞分化を亢進する遺伝子が幾つか確認された。現在、本miRNAのin vivoでの役割を検討するためにトランスジェニックマウスを作成し解析中である。また、同時に骨細胞特異的に発現するmiRNAの同定のために、次世代シークエンサーを用いた解析を実施中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
骨芽細胞分化におけるmiRNAの役割の解析に関して、in vitroの検討に関して標的遺伝子の同定、機能解析までにいたっており順調に経過していると思われる。また、トランスジェニックマウスの作成にも成功し現在は動物数の増加のための交配を行なっている。一方、骨細胞特異的に発現するmiRNA同定のための次世代シークエンサー解析に関して、検討に供するマウス数の確保に時間を要したため、当初の計画よりも若干の遅れが生じているが、現在では問題も解決し、当初の実験計画を遂行するために、解析を実施中であり、問題なく経過している。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、以下の実験計画に基づいて研究を遂行する。 ①骨細胞におけるmiRNAの生理的意義の解明 平成24年度の研究を継続するとともに、骨細胞特異的に発現するmiRNAの同定を行う。さらに標的候補遺伝子をin silicoで検索する。次いで、得られた標的候補遺伝子の発現をreal time PCR法及びwestern blotting法によりmRNAレベル、蛋白レベルで確認することでin vitroでの真の標的遺伝子を同定する。また、得られた標的遺伝子を過剰発現することにより、骨細胞に及ぼすmiRNAの抑制作用が救済されるかどうか検討する。 ②骨粗鬆症に対するmiRNAの骨形成効果の検討 本研究において同定されたmiRNAのうち骨芽細胞分化および骨細胞の機能に対して促進的に作用するmiRNAを、卵巣摘出術誘導性骨粗鬆症モデルに注射投与することで、骨粗鬆症の病態が改善されるかどうかを評価する。つまり、miRNAを一定期間マウスに投与後、組織学的に解析し、骨形態計測により骨構造に関するパラメータ、骨形成に関するパラメータ、そして骨吸収に関するパラメータを計測することにより、外因的に投与されたmiRNAの骨代謝動態に対する影響を評価する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は、マウスの維持・管理、in vitroにおける研究のための、細胞培養用培地、血清、試薬、酵素、プラスチック製品など消耗品の購入が主な研究費使用目的である。また、研究成果報告を目的とした学会参加のための旅費としても使用予定である。
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