研究概要 |
加齢と共に生体内に蓄積する酸化ストレスは、種々の臓器に退行性変化をもたらすが、骨組織に及ぼす影響は不明な点が多い。さらに細胞質内、ミトコンドリア内でそれぞれ酸素代謝、活性酸素制御システムが存在し、臓器によってそれぞれの役割、依存度が異なる。 ミトコンドリア内酸化ストレスと骨代謝制御との関係は不明であったため、ミトコンドリアでの活性酸素処理を担うMn-SODを骨組織特異的に欠損させたマウスを作成し解析を行っている。 骨組織特異的Mn-SOD2欠損マウスをの骨形態計測を行ったところ、骨細胞での特異的Mn-SODの欠損は、骨量の低下と骨脆弱性を来たし、骨粗鬆症を発症する事が確認できた。また、このマウスでは骨形成の低下と骨吸収の亢進を認めた。さらに詳細な解析を現在行っている。この成果をH25年国際骨代謝学会・アメリカ骨代謝学会・日本骨代謝学会・日本整形外科学会などにおいて発表した。発表者した共同研究者は、アメリカ骨代謝学会にてYoung Investigator Awardを受賞し表彰された。現在論文投稿中である。 また、廃用性骨萎縮の動物実験モデルを用いた解析から、廃用により骨での酸化ストレスが増加し骨量減少をもたらすことを明らかにし、さらに、抗酸化剤の投与がこの廃用性骨萎縮を予防することを明らかにした。この成果は、昨年Journal of Bone and Mineral Researchに掲載された(Cytoplasmic reactive oxygen species and SOD1 regulate bone mass during mechanical unloading. Morikawa D, Nojiri H, Saita Y, Kobayashi K, Watanabe K, Ozawa Y, Koike M, Asou Y, Takaku T, Kaneko K, Shimizu T.J Bone Miner Res. 2013 Nov;28(11):2368-80.) 今後も継続して骨組織の酸化ストレスによる骨量制御機構を解明し、加齢に伴う骨量減少の予防・治療に貢献したいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで明らかにされていなかった、細胞質(SOD1)およびミトコンドリア(SOD2)に存在する活性酸素の処理機構が破たんすることで、骨粗鬆症様の病態を呈することを、動物レベルで世界で初めて明らかにした。内容を学会などでも報告し情報を発信できている。 また、廃用症候群モデルでは細胞質での酸化ストレスの増加が骨量減少を助長することを明らかにし、成果を論文にし報告することができた(Cytoplasmic reactive oxygen species and SOD1 regulate bone mass during mechanical unloading. Morikawa D, Nojiri H, Saita Y, Kobayashi K, Watanabe K, Ozawa Y, Koike M, Asou Y, Takaku T, Kaneko K, Shimizu T.J Bone Miner Res. 2013 Nov;28(11):2368-80.)。
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