椎間板の大きな特徴として、人体中において最大の無血管組織であることである. そのため栄養物質や酸素は線維輪周囲および軟骨終板へ分布される毛細血管網から椎間板の基質を介した拡散や、濃度勾配による拡散によってのみ供給される. このことから、椎間板組織は平常状態においても他の組織に比較して低酸素状態となっており、力学的ストレスや炎症による消費亢進により、椎間板における酸素分圧は変化する. そのため椎間板における酸素分圧変化(低酸素・浸透圧)により惹起される血管新生といったシグナルの解明は椎間板変性のメカニズムを解明する上で新たな視点を提供すると考えられる. またこれまでにWntシグナルの発現調整により椎間板変性が生じる可能性が指摘されていることから、本研究では椎間板の恒常性維持に関与するとされるsurvival factorであるVEGFに注目し、椎間板においてのVEGFとWntシグナル間での詳細な分子学的機能【シグナル制御】について解析を行うことを目的とした. 実験はSD-Ratの椎間板細胞を用いて転写・遺伝子・蛋白レベルでのWnt/VEGF間でのシグナル調整を解析した。その結果、Wntシグナルの活性化が血管誘導因子であるVEGFの転写・遺伝子・蛋白発現を更新させることが分子レベルで解明された。
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