研究課題/領域番号 |
24791574
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
松延 知哉 九州大学, 大学病院, 助教 (20543416)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 骨格組織発生 |
研究実績の概要 |
近年、TGF-betaシグナリングが骨格組織発生、ヒト骨系統疾患や、骨脆弱性により骨折を来しやすくなる骨粗鬆症、脊椎後縦靭帯骨化症の発症等に関与することが報告されている。疾患の病態解明には、正常な骨格組織発生におけるTGF-betaシグナリングが果たす役割を解明することも重要である。 個体レベルで骨格組織発生を研究するにあたり、遺伝子改変マウスの作製は必要不可欠な手段となりつつ有るが、TGF-betaシグナリングに関しては、シグナル伝達経路のどの分子を標的にするかで、表現系が異なることが報告されている。その理由の一つとして、TGF-betaシグナリングが、複数のリガンドを使用し、細胞内シグナル伝達においては複数の下流伝達経路を用いることに起因すると考えられる。そこで、本研究代表者は、TGF-betaシグナリングが、受容体を経由することに着目し、I型受容体ALK5の遺伝子改変マウスを作製し、骨格組織発生および骨代謝における役割の解明を目的とした研究を開始した。 本年度は、昨年度に引き続き未分化間葉系細胞特異的ALK5ノックアウトマウス(Dermo1-ALK5CKO)の解析を行った。胎生18.5日の胎児を用いた解析では、Dermo1-ALK5CKOの一次骨化中心に石灰化した骨梁の中心に石灰化した骨梁が残存していた。組織標本を用いた骨形態計測では、Dermo1-ALK5CKOの石灰化した軟骨量はコントロールに比較して有意に残存している一方で、破骨細胞は変異マウスで有意に減少していることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度に引き続き、未分化間葉系細胞特異的ALK5コンディショナルノックアウトマウス(Dermo1-ALK5CKO)を用いて解析をおこなった。平成26年度の解析により、ALK5を介したTGF-betaシグナリングは、長管骨において破骨細胞分化を制御し、石灰化した軟骨柱を除去する役割を担っている可能性があることを明らかにした。破骨細胞は血球由来であり、Dermo1を発現していないことから、TGF-betaシグナリングは骨芽細胞などの分化を介して破骨細胞分化を誘導し、石灰化した軟骨組織を除去することにより、正常骨髄腔を形成しているものと推測された。以上のことは、これまでに報告がない新しい知見であり、研究は順調に進んでいると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
未分化間葉系細胞特異的ALK5コンディショナルノックアウトマウス(Dermo1-ALK5CKO)を用いて骨形成異常のメカニズムの解明を引き続き継続する。骨芽細胞は、RANKLを発現し、RANKを発現している破骨細胞前駆細胞の分化を制御していることが報告されている。本研究代表者は、これまでにDermo1-ALK5CKO四肢長管骨において、TGF-betaシグナリングは骨芽細胞の増殖、分化を制御していることを報告した(Matsunobu T, et al. Dev Biol. 2009)。次年度は、骨芽細胞におけるRANKL発現が、TGF-betaシグナリングを介しているかを主に解析する。また、骨芽細胞特異的ALK5CKO(Col1-ALK5CKO)を作製し、破骨細胞形成に異常が認められるかどうかを観察する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
組織学的骨形態計測はスムーズに行えたが、肝組織からマクロファージを単離し、破骨細胞を誘導する実験を行うにあたって条件設定に難渋し、試薬の消費が少なかった。
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次年度使用額の使用計画 |
骨芽細胞の免疫染色は、過去にも施行しているため、次年度の免疫染色は問題なく行える見込みである。また、今後RANKL-RANK破骨細胞の分化実験などにもちいる試薬の購入に用いる予定である。
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